ロードスターNR-Aの定説を捨て、「本能」を呼び覚まして掴んだ筑波1分9秒411

  • 太田哲也
2026.05.15

1本目の愕然。「前回タイムが、なぜ出ないのだ」

去る1月7日、筑波サーキット。マツダ ロードスターNR-Aを走らせ、スポーツ走行で好タイムをマークすることができた。今回の走行には、今の自分にとって避けては通れない「ある葛藤」とその克服があった。

この日は路面コンディションが良く、寒さも味方して、好タイムを予想していた。前回の走行で9秒台を出せていたから、どこか余裕を感じていたのかもしれない。だが、1本目の走行タイムは1分10秒000。期待とは裏腹の数字に、僕は愕然とした。

僕をロードスターのレースに誘ってくれた上田選手とは、よく一緒に練習している。彼は、僕が出場するロードスター・パーティレース・クラブマンクラスの格上となるシリーズ戦の、昨年度チャンピオンである。

その上田選手に「何秒でした?」と質問された。彼のタイムは1分9秒台。対する僕は、1分10秒フラット……。 回答するのが恥ずかしいというか、心底ガッカリした。「前回出たタイムがなぜ出せないのだ、俺は」と自問自答する。

データの裏付けと、「丁寧」という名の呪縛

すぐにデータロガーを比べあって判明したのは、その日の僕は「ダンロップコーナー下」で遅れているという事実だった。もともと僕は高速コーナーが得意で、ダンロップも速かったはずなのに、なぜだ?

そこで、2本目以降はこれまでの意識を捨て、別の思いで走ることに決めた。「理想のラインを正確にトレースしよう」という意識を、一旦解くことにしたのだ。

ロードスターNR-Aは、攻めすぎるとタイムが落ちてしまう。だからセオリーは、クルマをベストラインに乗せて丁寧に走ることだ。上田選手はこれがとても上手い。 一方、僕は現役のときの癖で、どうしても攻撃的に走ってしまう。

ロードスターに乗り始めた頃は、それが全くマッチせず、タイヤを壊してばかりいた。前輪のタイヤトレッドのショルダーが偏摩耗してしまうのだ。だからずっと自分を抑えて、「丁寧に、丁寧に」と心掛けてきた。

そうしてタイムアップしてきたが、あと一歩が足りない。ラインをなぞることばかりに集中しすぎると、無難にまとめるだけの「置きにいく走り」になってしまうのだ。

「いったれ!」——本能のままに走るという選択

コンスタントに周回を重ねる耐久レースなら、「置きにいく」のも正解だろう。だが、時には「いったれ!」という感覚でブレーキングポイントを遅らせ、アクセルを早く踏んでいく走りも必要だ。ここ最近、自分の中でその感覚が不足している……。その事実に、僕は自分自身に憤慨していた。

2回目の走行では、「丁寧に」を止め、本能のままに走ってみることにした。現役の頃は、常に攻めの走り、つまりアクセルを常に踏んづける。「綺麗に走ること」よりも「本能のまま気合いで走る」のだ。

その結果、上田選手のベストタイム1分9秒433に対し、僕は1分9秒411をマーク。 2/1000秒差は誤差の範囲だが、それでも、この差は最高に嬉しかった。自分の中で、何かが生まれた気がしたからだ。

老いへの言い訳を捨て、「復活」へ挑む理由

普段の生活でも自分の劣化を感じる。同級生のほとんどは仕事をリタイアしているし、「歳だ」「目が追いつかない」「物忘れが酷い」「反応スピードが遅い」「よく転ぶ」といった事象が付きまとう。さらに僕には、右足に事故の後遺症があり、歳と共に動きが悪くなってきている。

アグレッシブに走ることを回避する言い訳は、いくらでも作れる。だから余計に「置きにいく」。この歳になって失敗をして恥ずかしい思いはしたくない。そうやってチャレンジ精神も弱くなっていく。

だが、それで終始大人しい走りに終始してしまったら、本末転倒だ。太田哲也が走る意味がない。 僕が走っているのは、復活、活性化、そして若返り、まだまだ成長できるはずだと信じている。それを証明したい。それなのに置きにいって、最後までそつなく走って、それでレースに勝ったり、チャンピオンになったりしたとして、果たして僕は嬉しいだろうか?

消耗するのは、歳をとったからではない

現役の頃は、一周一周を全力で走り抜けていた。ハイパワーなレーシングカーは、そつなく走ろうとすれば一気にタイムが落ちる。だから、多少クルマが横を向いてもアクセルを踏み抜いていた。

「ロードスターNR-Aは丁寧に走らないとタイムが出ない」という定説はある。だが今回、自分の本来のドライビングスタイルと気持ちの強さで、1分9秒411という数字を刻めたことは大きな自信になった。

現役のときは、レースを終えると消耗して動けなくなるほど、一周一周がチャレンジだった。 今はそこまで攻めていなくても、終わると消耗している。だが、もっと攻めて走って、クルマから自力で降りられないくらいまで攻めなければ。

というわけで、レース後、僕が消耗し切っていても、それは歳のせいではありません。

「攻めているから」なのです(笑)。

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