待望の「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」

日産GT-R(R35型)がついに生産終了(過去記事:さらばGT-R:愛された名車の生産終了が意味するものとは?【日産GT-R】)。そのニュースに「ついに時代が……」と肩を落とした矢先、マツダが放った一手がこれだ。
最高出力200PSを誇る「マツダ スピリット レーシング・ロードスター12R」。 限定200台、価格はなんと700万円台後半。現行NDロードスターが132PS、ロードスター RFが184PSだから、同じ2リッターでも12Rはまさに“ハイパワーチューン”のスペシャルモデルだ。
GT-R終了とロードスター継続の意味

象徴的なのは、GT-Rの生産終了と同じタイミングでロードスター12Rが登場したこと。 世界的に電動化の波が押し寄せ、採算の厳しいスポーツカーは次々に消えていく。GT-R終了はその象徴だった。
そんな中でマツダは「まだロードスターを作り続ける」と宣言したに等しい。 200PSの特別モデルを送り出すことで、スポーツカー文化を守り続ける姿勢を見せてくれた。
これ、もう拍手喝采ものだ。
NDの衝撃と納得

NDロードスターがデビューしたとき、僕の最初の反応はこうだ。
「えっ、1.5リッター!?」
先代NCが2リッターだっただけに、伊豆サイクルスポーツセンターの試乗会でかなり意外に思った。 ところが走ってみるとすぐに理解した。
小排気量でも軽快に回るエンジン、“速さ以外の楽しみ”――アクセルを床まで踏んで高回転を楽しむ爽快感。スピードを出さなくてもニヤけてしまう軽快感。 その瞬間「なるほど!」と膝を打った。
当時は「パワー不足では?」という声もあったが、今となっては「よくぞ1.5で出した!」と感心する。あの決断がNDのキャラクターを決定づけたのだ。
サーキットでの“物足りなさ”

僕はいまNR-Aでサーキットを走っている。仲間とワイワイやるのは最高に楽しい。 でも一人で走っていると、どうしてもこう思ってしまう。
「もっとパワーが欲しい!」
特に袖ヶ浦フォレストレースウェイでは、1.5Lではさすがに非力だ。周囲の車がどんどん先に行ってしまう。だから僕は一度真剣に考えた。 「RFの2リッターを積んでしまうか? それともターボ化か?」
これはきっと僕だけの悩みじゃない。NDでサーキットを走っている人は誰もが思ったはずだ。だからこそ12Rの登場に「やっぱり!」と頷いてしまった。
それならアバルト124があるじゃないか!

実は僕、もう一つの答えを出していた。
「もっとパワーが欲しい? じゃあ124スパイダーがあるじゃないか!」 (参考までに、ロードスターNR-Aとアバルト124の違いをレポートした記事はこちら「マツダ ロードスターとアバルト124の走らせ方の違い」をご覧ください)
そうして手に入れたアバルト124スパイダーは170PS。 ターボのトルクでストリートもサーキットも“力強く加速”。これがまた絶妙に効く。 すでに生産終了していたが、高年式・良質な中古車を購入。結果は大正解。ロードスターの楽しさに“パワーの厚み”が加わり、世界が広がった。
だからこそ12Rの登場は僕にとってどんぴしゃり。 ただし気になるのは価格だ。12Rは700万円台後半。 一方で124スパイダーは中古市場で高年式・良質車でも400万円台後半〜500万円前後が実勢相場。 たとえば2020年式・走行2〜3万kmクラスなら支払総額450万円前後で狙える。
「124か?それとも12Rか?」――これはロードスター好きにとって、なんとも贅沢で悩ましい選択肢だ。
RFで十分?それとも……

もちろんラインナップには184PSのRFもある。「レースで使えないならRFで十分」という意見ももっともだ。いや、実際そうかもしれない。
でももしオープンの素ロードスターが将来2リッター化されるなら? 僕のNR-Aを2リッター化するか、1.5をECUチューンで高回転型にするか、はたまたターボを積むか――夜な夜な妄想が広がる。
“パワーがすべてではない”を知った上で

もちろんNDノーマルで「パワーがすべてじゃない」という楽しみは十分に理解した。 ただ、やっぱり本音を言えば「パワーがあるともっと楽しい」。
その答えをアバルトは124スパイダーで示していたし、マツダは今回12Rで応えた。 この2台を天秤にかける――まさにロードスター乗りにとっての究極の贅沢だ。
存在自体がありがたい

200PSロードスター12R。 GT-Rが舞台を降りた瞬間に、マツダは「まだスポーツカーを作り続ける」と宣言した。 この存在自体がありがたい。
そして僕のように「もっとパワーが欲しい」と思って124に行った人間にとって、12Rはもう一度悩ませる存在だ。 124か?12Rか? その選択肢があることこそ、スポーツカー好きにとって最高の幸福なのだ。
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