シミュレーターだけでは足りない? プロが教えるリアルレースで勝つための思考法

2025.09.05

バーチャルとリアルの狭間

先日、シミュレーターを多用している人と、リアルに走っている人のドライビングスタイルの違いについて考える機会があった。

きっかけは、VITA(入門フォーミュラ)を運転している後輩のインカー映像を見たことだった。

「筑波のダンロップ下コーナーは3速ですかね?4速ですかね?」と質問された。

しかしタコメーターが表示されず、区間タイムとシフトアップのタイミングを示すインジケーターしか表示されていなかった。それではエンジン回転数がわからない。的確なアドバイスもできない。

「タコメーターは表示すべきだよ」と伝えた。

タコメーターの重要性

タコメーターはクルマの状況を知るための重要な手段のひとつだ。回転数の把握ができないと、エンジンの状態を把握しておくことも難しい。

シミュレーターは、エンジンにトラブルが生じないので、走りだけに集中できるけど、リアルの世界では、機械をていねいに扱うこともとても大事だ。

またインジケーターだけだと情報が限定的で、シフトアップ操作にもワンテンポ遅れが出てしまいがちだ。

昔のレーシングカーと回転数管理

そもそも現代のレーシングカーにはレブリミッターがあるが、僕が若手の頃、現役で乗っていた1980年代のF2やグラチャンマシンにはそんなものはなかった。BMW製M12エンジンは1万rpm以上回り、驚くほど鋭く吹け上がった。

そしてタコメーターの文字盤にピーク表示のための針「スパイ針」があり、少しでもオーバーレブさせたら証拠が残ってしまう。だから速く走ることはもちろんだが、同時にタコメーターといつもにらめっこ状態だった。

そんな大変さは、今のレーシングカーにはない。もちろんシュミレーターにも。

シミュレーターのメリットと限界

シミュレーターの利点のひとつは、マシンのコンディションが常に一定なので、ブレーキングやコーナリングの正解を理解するには最適だ。何度も同じラインを試せる。つまり、その条件の安定性ゆえに、ある意味、「正解」がある世界でもある。

一方、リアルでは状況が常に変化する。タイヤの劣化、路面のラバー状況、気温や気圧の影響、気温や日射による路面温度の変化などにより、同じマシン/同じサーキットでも、毎回、毎周、条件が変わってくる。そのため、走りながら常に”新たな答えを探す”という思考が必要だ。

リアルでは常に五感と脳を使う

リアルな走行では、エンジンのフィーリング、タイヤのグリップ、ブレーキの効き、天候、路面温度など、あらゆる情報を走行中に分析しなければならない。

特にレースでは、雨が降ればベストラインは変わり、ドライ部分を探して走る判断力も求められる。路面状況は毎周、変化していく。こうした複雑でダイナミックな状況が、リアルドライビングの真骨頂だ。

シミュからリアルへ移行する人へ

シミュレーターからリアルに入ってきたドライバーは、まずは「正解」を探そうとする傾向があるようだ。しかし「2度と同じ状況は起こらない」のが現実。その変化に対応し、リアルにクルマと対話できるようになれば、一気に成長するだろう。

シミュレーターはトレーニングツールとして役に立つが、リアルな走行こそがクルマとの本当の対話だと思う。あえて言いたい──やっぱり、面白いのはリアルでしょ。

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