プロバスケットボール観戦で感じた「レースの未来」 ── 横浜エクセレンス vs 僕のサーキット視点

2025.04.21

プロバスケットボールチームの試合を初観戦

先日、ルノー・ジャポンからのお誘いで、横浜武道館にてB.LEAGUE(Bリーグ)のプロバスケットボールクラブ「横浜エクセレンス」の試合を観戦してきた。

正直なところ、僕はバスケットボールを“生”で観るのは今回が初めてだった。スポーツ観戦といえばラグビーで、バスケにはさほど興味がなかった……結果的に「これはすごいぞ」と唸らされることになる。

ルノーが支援する横浜のバスケチーム

ルノー・ジャポンはこの横浜エクセレンスのオフィシャルサプライヤーで、「ルノー カングー」をチーム車両として提供するなど、活動をサポートしているそうだ

ルノーの地元愛(?)には脱帽だ。

B3リーグ? それって下位リーグ?と思いきや…

ところで、会場に着いてから知ったのだが、B.LEAGUEには「B1」「B2」「B3」というカテゴリーがあり、横浜エクセレンスはその中のB3所属。ところが今季はなんと地区1位! B2昇格が見えているというから、これは実力派のチームだろう

B3と聞いて「セミプロ的な感じかな?」と少し失礼な想像をしていたが、それは完全なる誤解だった。

たとえばアメリカ・ウェストバージニア大学出身、身長211cmのローガン・ロート選手というすごい選手も在籍しており、自分との差に圧倒された。

大男”と“小兵”が共存するドラマ

観ていて一番面白かったのは、体格もプレースタイルもまったく異なる選手たちが同じコートで躍動していることだ。

211cmの大男がゴール下で圧をかける一方、キャプテンの大橋大空(たいく)選手のように身長165cmの“小兵”が、素早い動きで相手を翻弄する姿に胸が熱くな

小柄な選手が巨人の間を縫って走り抜ける様子は痛快だ。かつて僕は学生時代にラグビー部をやっていたが、当時は小な選手でも活躍できるポジションがあった。 「小柄な選手のほうが機敏で逆に目立って頭がよさげに見える」――これは現場で観た率直な感想だ。

試合そのものが“エンタメ”として完成していた

もう一つ、レースと比較して強く良さを感じたのは、「観客を飽きさせない仕掛け」の多さだ。

たとえば、相手チームのフリースロー時にはマスコットがゴール裏をウロウロして視覚妨害(もちろん演出)し、Eleganceという名の可愛いチアリーダーズたちが試合の合間にすかさず登場して踊りまくる。彼女たちの体力もすさまじい。なにしろ選手と同じくらいの運動量だ。

さらに地元高校のダンス部まで登場して、まさに地域ぐるみの一体感。アウェイチームに対するブーイングまで“演出の一部”という徹底ぶりには、「これはエンタメだな」と唸らされた。

「ホーム側の声援は熱狂、アウェイ側は完全なる悪者」――そんなアウェイチームに気の毒な空間ができあがっているのだった

レースにも足りないものが見えてきた

こうして観戦しながらふと思った。 「僕らのレースにも、こんな要素があったら、もっと面白くなるんじゃないか?」

サーキットって、観客がけっこう歩かされるし、セッションの合間に“待たされる”。目の前のシーンばかりで全体像が分からない。先日は鈴鹿でF1があったが、観戦に行った娘に聞いたら、今年も「遠足か!」というくらい歩いて、スタート前に疲労困憊だったそうだ。

一方、今回のバスケ観戦は、座っていればイベントが勝手に“やってくる”。テンポもよく、すべての瞬間が“おもてなし”

EVレースだと、パドックが近かったり展示が充実していたりと、まだましだが、まだまだ発展途上。観る人を“楽しませる”視点、「レースを応援する地元チームを育てる」ような発想がもっとあってもいいのではないかと思った。

「推しチーム」としてのレース文化を育てたい

たとえばレースにも“ご当地チーム”的な要素が加わって、子どもたちがチームカラーのTシャツを着て「行けーっ!」と声援を送るようになったら?

マシンが登場するたびに「きたー!」と歓声があがり、応援グッズを振りながらコース脇で盛り上がる……そんな光景が広がったら、モータースポーツはもっと“文化”として根づくはずだ。

バスケットボール観戦から得たヒント――それは、“応援されるスポーツ文化”をどう作るかということだった。

レースも変わるべきときが来ている。 エンジンの音だけじゃなく、観客の声援が轟く未来へ。 その実現に向けて、僕らもアクセルを踏んでいこうと思う。

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