新型スバル フォレスター試乗記! CX-5&RAV4と比べてわかった“上級感”の正体
2025.04.04
安心感のある進化と、スバルらしさ
【前回の記事はこちら】
新型スバル フォレスターの試乗会では、ウェットコンディションということもあり、あえてクルマを滑らせて走ってみたりした。
オーバースピード気味にコーナーに進入した場面もあったが、そこからステアリングをさらに追い切りすると、AWDが作動状態を変えてさらに曲がってくれる。これは一般公道でも、もしものときの緊急回避の際、障害物をよけられる挙動であり、公道での安全性にもつながる重要な要素だと実感した。
また重心の高い背高車であることを感じさせない、雨のサーキットでの身のこなしにも運転する楽しさと安心感があった。
安全思想とデザインアプローチのバランス
スバルは、もともと航空機メーカーだった歴史があり、設計思想に“機能最優先”が根付いている。最前列からの信号待ちでドライバーが着座位置から信号が見えなくてはだめ、といった機能要件が、がちがちに横たわる。
そのためどうしてもデザインが制約を受け、モデルチェンジの際にも、「なんか前モデルに似てるな~」となりがち。そこで今回は、まずはデザインを先に出し、それを機能要件とすり合わせるというデザインアプローチを採用したそうだ。
堂々としたプロポーションに仕上げつつ、頑丈さと量感を全面的に強化したという。流線形やキャラクターラインを打ち出した最近の都会派SUVが多く街を走る中、フォレスターのアウトドア派的なデザインはかえって新鮮に感じた。
都市生活者こそ“買い”な理由
- 新型スバル フォレスターの走行シーン
- 新型スバル フォレスターのディティール
では、新型フォレスターは“買い”なのか? 結論から言うと、自分は「買いだ!」。なぜなら、近年の都内の交通事情は自転車や電動キックボードの急増で、まるで無法地帯。2023年の交通死亡事故の内訳では、歩行者が約50%、自転車が約15%を占めている。
僕自身、それでも歩行者は自分が細心の注意を払っていれば何とかなるが、死角から突然現れたり、猛スピードで信号無視や逆走する「無法自転車」は、いつか事故になってしまうのではないかと毎日びくびくして通勤しているのが現状だ。
何としても加害者になるのは避けたい——そう考える中で、フォレスターはとても魅力的に映るのだ。サイドカメラで死角をカバーする仕組みも搭載する。そして今回注目なのが、新型フォレスターが備えるAピラー内蔵のエアバッグだ。衝突時、歩行者は頭部をボンネットにぶつけるが、自転車は跳ね上がってAピラー(ここは乗員保護の観点から強固に作る必要あり)に頭部がぶつかるケースが多い。そこでここにエアバッグがあるというのは非常に安心感がある。
そのエアバックの装備重量は約10kg。つまり、スバルは重量が10kg増えることによる燃費の悪化という営業的に避けたい要素よりも、乗員と歩行者の命を守ることを優先したのだ。その心意気に僕は感動した。
安全に対する開発思想が全社的に徹底されていることを、今回の試乗で改めて感じたのだ。
マツダCX-5たトヨタRAV4と比べて、それでも“買い”の理由
- 新型スバル フォレスターのディティール
- 新型スバル フォレスターのディティール
同クラスにはマツダCX-5やトヨタRAV4といった人気SUVが並ぶ。CX-5は上質な乗り心地と内装で勝負し、RAV4は装備の充実度とハイブリッドによる燃費性能でアピールしてくる。しかし、雨のサーキットで実感した「限界域での安心感」と「実用的な先進安全装備」において、新型スバル フォレスターは一歩抜きん出ていた。
また今回、開発者と一対一で話す機会があったが、彼らが「事故ゼロを目指して」というキーワードを多用していたのが印象的だった。これは他のメーカーの開発者よりも安全意識が高いと感じたポイントであり、そういった思想で作られたクルマなら、細かな部分にまで“安全の仕掛け”が散りばめられていると信じられる。
さらに驚いたのは、トリム形状などのとても小さな変更を加えた段階でも、シュミレータ―任せにせず、再度実車で最終テストを行うようにしたと聞いたこと。通常は「これくらいなら影響ないだろう」で済ませてしまう部分にも、再テストを行うその徹底ぶり。昔は、内装材がこすれて異音が発生するクルマが多かったが、こうした取り組みにより、質感も高まっていくだろう。まるで受験勉強で暗記カードを最後の試験会場でまでめくり続けるような気合い、スバルの本気を感じた。
開発者の熱い思いがいっぱい詰まった新型スバル フォレスター。走行性能、安全性、装備のバランス、どれを取っても“買い”の一台だ。
▽その他のスバルの記事もご一緒にどうぞ
・新型スバル フォレスターは“買い”か? 雨のサーキットでターボモデルとハイブリッドを試す
・スバル クロストレック ストロングハイブリッド 試乗レビュー|新型SUVの魅力を徹底解説!
・スバル クロストレック再考! ひと味違うシンメトリカル4WDと進化したアイサイトを検証
・スバルの良心がまじめに開発したベースモデル「インプレッサST」
・レヴォーグ レイバックよりもSUVらしいタフさや逞しさがあるスバル クロストレック