【旧車・クラシックカー好き必見】世界初の市販ターボ車「BMW 2002ターボ」、運命の“買わないか?”話。どうする俺?
2025.04.18
マルニ・ターボと赤い糸が繋がった?
僕がFJ1600という入門フォーミュラでプロレーサーを目指していた駆け出しの頃、練習に付き合ってくれた石田さんというお坊さんが、天寿をまっとうされた。それで最近になって、その方が長年大事にしてきたBMW 2002ターボを「買わないか?」という話が僕のところに来た。
「え? 2002ターボってあの伝説の?」と思った方、正解。世界で初めてターボを装着した市販車だ。カタチは四角いのだが『サーキットの狼』にもスーパーカーとして登場していた。
50年前の1974年製。丸目二灯で愛らしい。クルマとしてはとっても魅力的だ。 そもそも2ヵ月前の2月にパシフィコ横浜で開催された日本最大級のクラシックカーモーターショー「ノスタルジック2デイズ2025」で、たまたま展示されていた2002ターボを見て、「うわ、かわいい!懐かしいな、石田さんが乗ってたな」と思った“直後”にこの話が来た。
え、これってまさかのクルマ版・赤い糸?
BMW 2002ターボの魅力と歴史【最強のマルニ】
改めて言うまでもないが、BMWの2002シリーズは1968年に登場したコンパクトセダンで、日本では「マルニ」の愛称で親しまれており、軽量なボディにパワフルなエンジンを積むという、走り好きにはたまらない存在だ。
まず基本となる「2002」は、シングルのソレックス製キャブレターを装備したベーシックモデル。その後、ツインキャブの「2002ti」、1971年にはクーゲルフィッシャー製メカニカル・フューエルインジェクションを採用した「2002tii」が登場し、パワーもトルクも一段とアップ。これが“あのターボ”への布石となる。
そして、ついに1973年、BMWは航空機エンジンで培ったターボチャージャーの技術を市販車に世界で初めて投入し、登場したのが「BMW 2002ターボ」だ。まさに「最強のマルニ」である。
心臓部は、圧縮比を下げた2002tii用の2リッター直列4気筒SOHCエンジンに、KKK製ターボチャージャー+メカニカルインジェクションを組み合わせたもので、最高出力は170馬力。今となっては普通? いやいや、1970年代前半にこの数値はとんでもない。
ギア比はクロスレシオに変更され、ラジエーターは大容量化。オイルクーラーも備え、前後のトレッドは拡大、足まわりもブレーキも強化。こうしたチューニングにより、最高速度は211km/h、0-400m加速は15.3秒という当時としては驚異的なパフォーマンスを実現していた。2リッターのファミリーセダンがこの加速って、もはや「羊の皮を被ったF1マシン」といえよう。
逆さ「turbo」文字の意味と、2002ターボのデザインの特徴
エクステリアにも注目だ。ワイド&ローを強調するオーバーフェンダーやエアダムスカートが装備され、リアビューで前車のドライバーを威圧する(?)ために、フロントにあえて逆さ文字で書かれた「turbo」の文字! この発想、ドイツ人特有の茶目っ気か。
ちなみに、このオーバーフェンダー、実は日本仕様ではパテ埋めされていた。というのも、当時の運輸省がリベット留めを認可しなかったから。まるで「かたいお役所 vs クルマ愛好家」の縮図のような話である。
ボディに描かれるBMWモータースポーツを象徴する3色ストライプも特徴的。が、今回僕に話が来た個体には、そのストライプも“turbo”の逆さ文字もナシ。非常にシンプルな出で立ちで、ボディカラーはシルバー。手持ちのクルマでいうと、ディーノ 246GTと近い佇まいだ。
旧車ライフの現実:所有することと走らせることのギャップ
正直なところ、欲しい。何か運命的な感じもする。けれど冷静になってみれば、現在僕が所有しているクルマは12台。しかも、最近まったく乗っていない車種も多い。アルファロメオ4Cやロータス エキシージは、まさに“宝の持ち腐れ”状態。数を減らすべきだなと思っていた。
それにイタリア車のイメージがある僕とのギャップが。TEZZOのビジネスにも関係しないし。正直なところ、僕自身とBMWの間に今は深い関係性もない。その昔、E30型のBMW M3で3年間、グループAレースで戦ったけど、今はイタリア車とのお付き合いが中心だから。
BMW 2002ターボを購入する条件とは?
やはりこの2002ターボを迎えるとしたら、「まず乗る」というのが大前提だな。クルマ好きにはいくつかの選択肢があって、ガレージで愛でる派、ナンバーを切って倉庫保管派、もしくは新しいクルマが現れると、潔く下取りしていく派。
僕はというと、どれでもないかな。なんとなく、欲しくなったら買って、乗り倒したい。できればサーキットを走って、どっぷりとした付き合いをしたい派。となると、日常的に実際に乗れるかどうかが、大事となる。整備をしてくれるメカさんも探さなければ。
かつて子どもたちのアイドルだった2002ターボはいま、オジサンたちのヒーローになっている。そんなクルマを“迎える資格と覚悟”が、自分にあるのかどうか。今、僕は真剣に悩んでいる。
というわけで、買うべきか、買わざるべきか。もしあなたが僕の立場だったら……どうします? コメント欄にてご意見ください!
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