さらばGT-R:愛された名車の生産終了が意味するものとは?【日産GT-R】

2025.09.12

まさかブランドを捨てるとは!

18年間、クルマ好きを魅了してきたR35型GT-Rが、ついに生産終了となった。

部品調達の困難化、生産コストの上昇、さらには排ガス規制や衝突安全対策への適合といった課題もある中で、現在の日産の経営状況では「生き残らせる」ことができなかったようだ。

事情は理解できる。しかし、ビジネスの観点から見ても、これほど「もったいない」と感じる決断はない。

日産の象徴であり、誇りであった

GT-Rは日産の象徴だった。クルマそのものが日産のブランド価値を牽引し、世界中の自動車ファンを魅了してきた。ルノー・日産アライアンス時代において、カルロス・ゴーン氏がGT-Rの復活を主導したことは大きな成果だった。

しかし、そのブランドを今回、日産は自ら捨ててしまう決断を下した。これは、ブランドを捨ててコストパフォーマンスという土俵での競争に飛び込むことを意味する。

現在、中国のEVメーカーは「ブランド」ではなく「コストパフォーマンス」で勝負している。そんな市場で、ブランドを捨てた日産が同じ土俵に立って、果たして勝機はあるのだろうか。

中国には同様の競合がいくらでも存在する。そして中国製EVのクオリティは、今や見違えるほど向上し続けている。ブランドを捨ててしまうという判断が、日産の将来に与える影響は計り知れない。

たとえ多少性能が落ちたとしても、あるいは値段が倍になったとしても、納期が延びたとしても、GT-Rを続ける道は、本当になかったのか。

R32型GT-Rの思い出:勝つために生まれてきた

今回終了したR35型は、R32型GT-Rを起源とするモデルだ。 R32型スカイラインの開発主管だった伊藤修令さんに、以前ご自宅でお話を伺ったことがある。彼は「グループAで勝つためにGT-Rを作った」と語ってくれた。4WDシステム「アテーサ」、そしてレギュレーション上有利な排気量など、すべてが勝利を目指した設計だった。つまり、レースで勝つためのクルマが市販車として登場したわけだ。 そういう“勝つための物語”を、日本人はとても好む(世界中の人もかな)。

僕自身はR32型GT-Rが大活躍するグループAレースでは、トヨタ カローラFXやBMW M3で参戦していた。クラスが違ったので直接対決の構図はなかったが、混走だったのでその予選一発の速さを目の当たりにした。当時のレーサーなら誰もが「勝てるマシンGT-R」で参戦したいと思ったはずだ。

後に、N1耐久レース(現・S耐)では、僕はマツダRX-7(FD型)でGT-Rと同じクラスに参戦したが、予選一発でのブーストアップと四輪駆動のトラクション性能には、ファクトリーチームのRX-7でも歯が立たなかった。

さらに濡れた路面では大人と子供。コースアウトしてもグラベルをものともせず、自力でコースに復帰してくる姿は、まさに「戦車」。悔しさ紛れにチームのメカニックたちは「スポーツカーじゃなくて戦車だ」と呼んでいたほどだ。

開発秘話、生みの苦しみがあった

市販車をレースカーに仕立てたRX-7と、レースで勝つために生まれた武器・GT-R。 その違いを、僕たちは身をもって思い知らされた。 R32型GT-Rは市場でも成功を収めた。

しかし生みの苦しみは相当なものだったようだ。 伊藤さんによれば、開発初期には電子制御トルクスプリットの4WD「ATTESA E-TS」導入にチーム内からも反対意見が多く、説得が大変だったそうだ。

「開発は機関車起動ではなく新幹線方式で行く」と説得したらしい。そうやってなんとかGT-Rという名車を誕生させた苦労と情熱には、今なお敬意を抱いている。

GT-Rが築いた価値は、簡単には戻らない

レースキャリアにおいて常に日産の反対勢力側にいた僕も、実は一度だけ日産車でレースに出場したことがある。 R32型GT-Rの前身であるR31型スカイライン、そのホモロゲーションモデルのGTS-Rで、鈴鹿1000kmレースに参戦した。

エンジンには十分なパワーがあったが、二輪駆動だったため、フルパワーをかけるとすぐにリアが流れるじゃじゃ馬だった。しかしGT-Rでは四駆になってフル制御になったから、そりゃあ無敵状態になるよな。

歴代GT-Rが積み上げてきたブランド価値、日産という名前に宿る信頼と誇り。それは一朝一夕で築けるものではない。

僕自身は日産とは逆の陣営から対岸を見てきたが、それでもGT-Rにはリスペクトを抱いてきたし、生産終了を本当に惜しいと思っている。 きっと日産に想い入れのあるファンや関係者の喪失感は、遥かに大きいだろう。 心底、残念ではある。

そしてありがとう「GT-R」。

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