雨でも安心!? 新型ロードスターのDSC-TRACKモードを筑波で検証
2025.05.09
DSC-TRACKモード、雨の筑波サーキットで本気検証
ついに雨天での実力を確かめる時が来た。サーキット走行経験者なら気になる新装備「DSC-TRACKモード」だ。
舞台は、いつもの筑波サーキット。平日の冷たい雨が降るなか、20分のスポーツ走行枠30台のところ、当日は僕を含めてわずか2台だけだった。みんな雨が嫌なんだね。でもDSC-TRACKを試したい僕にとっては絶好のチャンスだ。
NDロードスターの制御系統が進化し、これまでのDSCオン/オフ2択から、サーキット向けの中間モードとしてDSC-TRACKが登場。TCSとDSCの作動頻度を抑え、車両のある程度の挙動(スライド)を許容しつつも、限界を超えたときには制御を入れる――それがこの新システムの持ち味である。
雨でも“攻められる安心感”とは?
僕は既にDSC-TRACK搭載の新型を注文済みだが、トラブルがあったみたいで二月納車予定がまだ来ない。そこでマツダから「広報車を使ってください」と、ありがたい提案。だがこの個体は当然ノーマル状態で、僕の愛車と違ってペダル位置が合わない。僕は足に後遺症があり、ペダルの高さを調整しないとヒール&トゥがまったくできないのだ。
そこで、即席のスペーサーとTEZZOの大きなペダルを用意し、本来はビス止めだがそうもいかないのでガムテープで固定。まるで昭和のDIYみたいだが、これが意外と効果的。早めにサーキットに到着して準備を整えてコースインした。
ドライ路面ならDSCは完全オフで走る。でも今回はDSC-TRACKをオンにしてみた。雨だとより慎重に、そしてなるべくリアをスライドさせないように走った方が速い場面がある。そうやってアクセルやステアリングの微調整で挙動をコントロールしている限り、システムは介入してこない。
「あれっ、入っているのかな?」そう思った矢先、縁石に片輪を乗せたらクルマがグラッと揺れ、その後振られたときに制御介入。それから最終コーナーにオーバースピードで入ってしまってクルマがコース外にはみ出そうになった時、強めに姿勢が乱れたら介入――その二度の“危ない瞬間”に限って、的確に制御が入ってくれたのだった。
スライドOK、でも行き過ぎたら介入!
たとえばパワースライドを意図的に出しても、DSC-TRACKは許容してくれる。これはドライバーの操作を尊重してくれている証拠で、僕のように“限界ギリギリ”を楽しむ者にとってはありがたい機能だ。
制御のタイミングは絶妙で、「おっと、やりすぎたかな?」と思った瞬間にガガッと介入して、スピンを防いでくれる。これはまるで、師匠が後部座席に乗って「そこまで!」と制止してくれるような安心感。
速さに関しては、DSCオフと同等程度で、つまり、速さをさほど犠牲にせず、保険だけ掛けられるようなイメージだ。
ピュアスポーツvs電子制御、その狭間で
ただし、これは僕個人の意見だが、誤解を恐れずに言うなら、サーキットとは“リスクを負う場所”でもあると思っている。電子制御が守ってくれるのは有難いが、それが行きつく先は、もはやドライビングではなくシミュレーションになってしまう。自分で操作して、自分でミスをリカバーするからこその、スポーツドライビングの醍醐味だ。
現状のスーパースポーツカーのような介入過多な電子制御は、速くても個性を感じにくいし好みじゃない。一方で、このDSC-TRACKモードは、あくまで“ドライバーを信頼したうえでの最終セーフティネット”という立ち位置。そこにマツダらしい思想を感じる。
でもやっぱり反論覚悟で、個人的にはここで止めてね、という気持ちがある。
さて、あなたなら、雨のサーキットで「制御少なめの安心感」と「ノーガードのスリル」、どっちを選ぶ?
クルマ任せの安心感も悪くない。でも、びしょ濡れの路面にタイヤを滑らせながら、自分の腕と感覚を頼りに攻めていく。そんな“ゾクッとする楽しさ”も、クルマ乗りの醍醐味じゃないだろうか。
自分の判断で切り抜けた瞬間にこそ、「ああ、今クルマと一体になれた」と思えるのだ。それはまるで人生と同じ。
「俺は今、生きている!」という実感をエンジョイしたいのだ。
それにはリスクも必要だ。
▽ロードスター NR-Aに関するその他の記事もご一緒にどうぞ
・注目機能:新型マツダ ロードスター、DSC-TRACKモード搭載! 自由か?安定か? “電子制御ジレンマ”の先に見えるもの
・参加者急増中! 大人のためのモータースポーツ、ロドマスがアツい!
・「時間を買う」という決断|マツダ ロードスター NR-Aを再び選んだ理由