なぜスバル フォレスターは安心して曲がれるのか?雪上試乗で見えたスバルの開発思想

  • 太田哲也
2026.05.14

スバルは“曲がる挙動”を突き詰めている

スバル フォレスターの雪上試乗会に行ってきた。会場は群馬サイクルスポーツセンター(通称、群サイ)、サーキットではないので一般道に近い条件でクルマを試すことができる。ここで改めて感じたのは、クルマは「曲がること」がいかに大切か、ということだ。

昨年、スバルの開発者から「太田さんは先月の雨の袖ケ浦のフォレスター試乗会はどうでした?」と聞かれた。

「うん!? よかったですよ」と答えたが、その背景にはこういう事情があった。

以前、雨の袖ヶ浦フォレストレースウェイでフォレスターの試乗会があり、一部のモータージャーナリストから「オーバーステア過ぎる(曲がりすぎる、テールがスライドしてしまう)」という評価が出たという。開発者たちはその声を気にしていたのだ。

サーキット評価では見えない本当の安心感

袖ヶ浦はもともと日本のサーキットとしては路面のミューが低めで、雨が重なればなおさら滑りやすい。そこをハイスピードでコーナリングするのだから、オーバーステアが顔を出す場面があっても不思議ではない。そうした条件だけを切り取れば、オーバーステアの評価自体は理解できる。

ただし、その評価がそのままクルマの本質を表しているかというと、話は別だ。

サーキットで合わせた評価軸では、限界域で破綻しにくいアンダーステア寄りの安定特性が良いと受け取られやすい。しかしそうした特性に振ると、一般道、とりわけ雪道のような低μ路では曲がりづらくなる。曲がらないクルマは安心ではなく、むしろ怖い。

コーナーでフロントが逃げて真っすぐ行ってしまえば、対向車線にはみ出すリスクが高まる。だが、鼻先さえ入ってくれれば、あとは運転手が何とかできる。そして現代のクルマは電子制御によってスピンを抑えることもできる。その手前でドライバーが扱える「曲がる余白」もできる。

「曲がる意思」と「操作できる余白」が安心感につながる

今回、雪道をフォレスターで走り、その特性が安心感につながることを改めて実感した。

雪道のコーナーでハナがスッと入り、そのあと制御が介入してくるまでの“間”がある。ほんの一瞬、1秒にも満たないわずかな時間だが、ドライバーは確実にその余白を感じ取ることができる。

ハナがすっと入ったタイミングでパワーをかけていくと、さらにクルマは素直に向きを変えていく。

この「曲がる意思」と「操作できる余白」が、安心感を生むのだ。

群サイでの雪上試乗会で、開発者に「今回は『オーバーステア過ぎる』という声はジャーナリストから、なかったでしょ?」と聞くと、「なかったです」と笑顔で返ってきた。それはクルマの評価軸が、サーキットから日常の使用環境に戻ったからだ。

開発者の試行錯誤が「操作を受け付ける一瞬」を生む

フォレスターは雨の袖ヶ浦フォレストレースウェイを速く走るためのクルマではない。生活に根差し、雪や雨といった現実の路面で、ドライバーに操作の余白を残しながら確実に曲がるためのクルマだ。

食事中に開発者と雑談する機会があった。2025-2026 日本カー・オブ・ザ・イヤーで1位となり、トロフィーが届いたとき、チーム全員で集まって喜んだそうだ。

クルマの開発現場は傍から見れば華やかに映るかもしれないが、実際には年単位に及び地道な試行錯誤の連続である。そしてその積み重ねが、ドライバーにとっての「安心感」として現れる。

だからこそ、雪上で感じたあの「操作を受け付ける一瞬」が生まれている。

〇スペック
スバル フォレスター SPORT EX
●全長×全幅×全高:4,655mm×1,830mm×1,730mm
●ホイールベース:2,670mm
●車両重量:1,640kg
●エンジン:水平対向4気筒DOHC16バルブ  デュアルAVCS直噴ターボ“DIT”
●排気量:1,795cc
●最高出力:130kW(177PS)/5,200-5,600rpm
●最大トルク:300N・m/1,600-3,600rpm
●トランスミッション:リニアトロニック
●駆動方式:AWD
●使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
●タンク容量:63L
●サスペンション:前/ストラット式独立懸架
           後/ダブルウィッシュボーン式独立懸架
●ブレーキ:前後/ベンチレーテッドディスク
●車両価格:419万1000円〜

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