ジャパンモビリティショー2025で気になったクルマたち

会場に入った瞬間、数字や効率だけでは語れない“自由な空気”が広がっているのを感じた。EV一辺倒ではなく、もっと自由で、もっと遊べる世界に向かい始めているだ。
昨年までのジャパンモビリティーショー(JMS)は合理性や走行距離の数字で競い合う“EVの採点競技”のような雰囲気が強かったが、今回はそこに「遊び心」「モータースポーツの香り」「暮らしのリアリティ」が戻ってきていた。
ホンダ:ブルドッグ、マイクロEV、さらに“空、そして宇宙へ”

まず目を奪われたのがホンダ。Super-ONE PrototypeというまるでEVのシティ ブルドッグは、オーバーフェンダーで拡幅され、まるで「走りたくてうずうずしているEV」だ。かつてのブルドッグのように、サーキットで転びそうになる“愛すべき暴れん坊”の雰囲気を醸し出す。アバルト595/695のようなヤンチャ的チャーミングさというか、キャラ立ちがあって、発売されたら人気になる気がする。
マイクロEVにも注目だ。高齢者の免許返納が進んでも、地方ではクルマなしの生活は成り立たない。そこで「スピードは出ないが、買い物に行ける小さなクルマ」というニーズが確実に増える。日本社会の現実に寄り添った方向性だ。
そしていよいよホンダは地上を越え、空へ、さらに宇宙へ。と研究を広げている。ジェットをつくり、今回は宇宙領域にも踏み込むロケットが展示されていた。全方位に展開する姿勢に“ホンダらしさ”が戻ってきたと感じた。
スズキ:軽トラEVと“動く台車”

スズキは軽トラEVを展示していた。例えばイベント会場のフードブースや商店街の移動販売など、すぐに使われる姿が想像できる仕上がりだ。EVなら排ガスがないため、屋内イベントや商業施設内でも使える。ランチの提供、物販、移動販売など、軽トラ文化の発展系が広がる未来を感じた。
そして“動く台車”。その上にセブンイレブンのデリバリーBOXやウーバーの荷物を載せ、街中を走る。こういう“縁の下の力持ち”のEV利用が社会を支えるようになるのだろう。スズキの実用性への寄り添いは安定感がある。
今回のJMSでは、ロボット研究が各社で一気に進んでいることが見て取れた。AIの先にあるのは、きっと“身体を持ったAI”。その予兆のような存在感だ。移動、配達、生活補助――クルマの外側にもモビリティの概念が広がっている。
BYD:軽EVからU9まで、守備範囲が広い

BYDは元気いっぱい。日本市場専用の軽自動車EVを出そうとしている一方で、高級ブランドのヤンワングからはU9というスーパーEVスポーツを展示。
日本導入予定はないが、ニュルでファストラップを出したという話まである。中国勢の展開スピードは強烈だ。
ヒョンデ:モータースポーツへの“高い関心度”

韓国メーカー、ヒョンデは驚くほど“モータースポーツ濃度”が高かった。レーシングウェア、シミュレーター、競技車両、どれも熱がある。韓国ではモータースポーツ文化が本気で育ってきているのが分かる展示だ。
そして展示されていた「インスタロイド(INSTEROID)」は、かつてのプジョー205ターボのようなちょいワルな雰囲気で、これまたキャラが立っていた。
スバル:アウトドアの世界観と、レオーネの“蘇り”

スバルブースで印象的だったのは「ウィルダネス」。アメリカ市場から逆輸入された“アウトドア全振り”のフォレスターやアウトバックは、見ているとキャンプに行きたくなる。僕は、オートキャンプをやったことはないが、「このクルマを買ってやってみようかな」と思わせる力がある。
さらに、2代目レオーネをベースに米国ジムカーナ仕様へ作り替えた車が目を惹いた。オーバーフェンダー、作り替えられたエンジン、ジャンプ時にボンネット後方から飛び出すフラップ。古いクルマを最新技術で蘇らせる“レストモッド”の流れが、いよいよ本格化していると実感した。
マツダ:静かな情熱

マツダは今回も、美しいスポーツクーペのコンセプトモデルを出してきた。毎回「買わせないコンセプトカー」を見せられている気もするが、やはり心を動かす。
ヤマハ:が放つ“異物感”と自由

もっとも“心が動いた”のが、ヤマハの試作車「トライセラ プロト」だ。強引に驚かせる感じではなく、気づいたら引き込まれているタイプの面白さがある。前から見ると、サイクルフェンダーを付けたスーパーセブンの現代版のよう。しかし後ろに回って、完全に凍りついた。後輪が一輪なのだ。
しかもその一輪が“逆位相ステア”を行う。前輪が左なら後輪は右。これにより旋回を素早くできるわけだが、当然ながらオーバーステアは強烈になるはずだ。「リアのグリップが破綻しやすいんじゃないか?」と質問すると、ヤマハの答えは明快だった。
「まさしくその“曲がること”こそが、スポーツドライブの楽しさなんです」
運転する楽しさはコーナリングにある。では、なぜ楽しいのか?――市販予定はないのに、ヤマハはそこを探るためだけの目的で、試作車を作ったという。こういう挑戦を平然とやってのけるあたり、ヤマハと言う会社の“遊び心の筋力”を感じた。
その他の気になったクルマ
メルセデスの“攻めたデザインの巨大フロントフェイスはもはや怪魚レベル。ナマズのような顔つきで、予定調和とは正反対。しかし、こういうデザインの方が、後になって強い印象を残すものだ。
豊田合成の安全重視コンセプトカーは、自転車やキックボードが当たっても衝撃を吸収する外装が特徴だ。こちらも企業アピール目的で市販予定はないが、“事故の未来”を考えた挑戦は評価したい。
ちなみに僕は今回初めて知ったのだが、ここはトヨタ自動車の関連会社であるものの、社名の読みは「トヨ“タ”」ではなく「トヨ“ダ”」なのだという。トヨタ自動車は、にごりの少ない字の方がすっきりするから「トヨタ」という社名にしたらしい。ちなみに豊田家は「トヨタ」でなく「トヨダ」である。“裏の豆知識”。
最後に:ロードスターのドリ車
会場の片隅で、ロードスターに大型エンジンを積んだ、ドリフト車が展示されていた。合理性ゼロ。でも、ばかばかしくて面白い。クルマはやっぱり自由だ! その自由さが確かに戻ってきていると感じた。
EVの効率化が進む一方で、今回のJMSは“遊び心”や“スポーツの原点”が確かに戻ってきていた。数字では測れない価値――その手応えが強く残るショーだった。
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