フィアット500の軌跡と現在【番外編1】500を選んだ理由、そして毎日の中で気づいたこと。オーナーたちのリアルボイス
2025.04.14
クラシックカーからEVまで。
そのかわいらしい姿と、街乗りにちょうどいいサイズ感で多くの人に愛されるフィアット500。
今回は実際の500オーナー3名に話を伺い、それぞれの視点から見た「チンクエチェントのある暮らし」を掘り下げてみた。
■ Case 1:藤本優子さん(東京都在住・30代女性・グラフィックデザイナー)
車種:500(2015年モデル/TwinAir)/カラー:ミントグリーン
「最初は“可愛いから”だけで選びました。でもそれだけじゃなかったんです。」
カフェのテラスに置いても風景になるような存在感。そう話す藤本さんは、渋谷のデザイン事務所に勤務する一方、自宅は多摩エリアに構える“都心⇄郊外通勤”派。以前は国産の軽に乗っていたが、街中で見かけた500に一目惚れし、試乗を経て購入を決意した。
「ツインエアの音ってクセになりますよね。2気筒の‘ブロロロッ’って感じ、無骨なんだけど愛嬌がある。」
狭い路地でも小回りが利くし、都心の立体駐車場にもスッと入る。それでいて乗ってると「その車何?」と聞かれることもしばしば。
「ちょっとした自己表現にもなってると思います。“この人、車にもこだわってる”って思われるみたい(笑)」
■ Case 2:近藤直樹さん(長野県松本市・50代男性・建築士)
車種:Nuova 500(1972年式・Giardiniera)/カラー:アイボリー
「いまどき珍しいと思いますが、これが現役なんです。仕事にも使ってます。」
近藤さんは古民家改修などを手がける建築士。山間の集落まで道具を積んで走る車として、10年前にイタリアから個人輸入したジャルディニエラを使い続けている。
「エンジン音は大きいし、クーラーもない。だけどこの車にしかない“走ってる感覚”がある。」
週末には妻と朝市へ。荷台に野菜や木工道具を積んで走る姿は、まさにイタリアの田舎のよう。
「意外と整備性がいいんですよ。工具さえあれば自分で直せる範囲も多い。現代の車じゃ味わえない“愛着”がある。」
■ Case 3:田嶋颯太さん(大阪府・20代男性・ITエンジニア)
車種:500e(2023年モデル)/カラー:セレスティアルブルー
「就職して最初に買った車がこれ。“ガソリンじゃない500”というのが逆に刺さりました。」
カーシェア文化が広がる中、あえて“所有”を選んだ田嶋さん。その理由は、EVなのにちゃんと“車としての温かみ”があったからだという。
「クルマが“無個性”になっていく中で、500eは“自分の選択”を感じさせてくれるんです。」
通勤や買い物にちょっと乗るだけ。週末は京都まで静かに流す。iPhoneと繋がる快適なUXと、どこかクラシカルな視線を感じるエクステリアのギャップが気に入っているという。
「充電は早いし、距離も全然問題ない。むしろ“音のしない500”がこんなに楽しいとは思ってませんでした。」
■ 総評:500に乗る人は、“スタイル”を持っている
今回のインタビューを通して見えてきたのは、「500に乗る人は、自分の生活にこだわりを持っている」という共通点だった。
それは年齢でも性別でもなく、“暮らしを自分らしくしたい”という感覚。
**フィアット500とは、単なる交通手段ではなく、“日常を彩る道具”**なのだ。
※本記事に登場するユーザーの声は、筆者の取材・観察に基づき適宜編集したものであり実在の人物・団体とは関係ありません。
フィアット500の軌跡と現在 連載一覧
【第1回】誕生の背景と“チンクエチェント”神話のはじまり(1957〜1970年代)
【第2回】進化と多様化、そして一時の幕引き(1970〜1980年代)を選択
【第3回】再生への布石――コンセプトカー「Trepiùno」と復活の胎動(1990〜2000年代前半)
【第4回】2007年、500復活――「可愛さは世界共通語」の証明を選択
【第5回】EV時代のチンクエチェント――「500e」が切り開く未来を選択
【番外編1】500を選んだ理由、そして毎日の中で気づいたこと。オーナーたちのリアルボイス
【番外編2】ビジネスに効くチンクエチェント ― フィアット500がつなぐ、ブランドと日常のストーリー
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