連載企画:スバル・クロストレックが切り開く、“冒険と技術”のクロスロード【第1回】XVからクロストレックへ──名称変更に込められたスバルの戦略的意図

2025.04.24

crosstrek

スバルは2022年、新型「クロストレック(CROSSTREK)」を発表し、それまで日本市場で親しまれてきた「XV」の名称を刷新した。単なるモデルチェンジにとどまらず、車名そのものをグローバルで統一した意味は大きい。本稿では、この名称変更の背景にあるスバルの戦略と、クロストレック誕生の意義を探る。


■ なぜ「XV」から「クロストレック」へ?

XVというモデル名は、元々は2010年に欧州市場で登場した「インプレッサXV」がルーツだ。日本国内では2012年に独立車種として登場し、都市型クロスオーバーの先駆けとして人気を集めた。だが、北米では当初から「Crosstrek」の名が使われており、同一モデルに異なる車名が用いられるというやや複雑な状況が続いていた。

この混在を解消すべく、スバルは第3世代(2022年〜)から「Crosstrek」に名称を統一。北米を主戦場とする戦略車として、世界市場でのブランド整合性と販売効率を高める意図があった。


■ 「BOLDER」デザインに見る冒険の表現

新型クロストレックは、スバルが掲げる新デザインフィロソフィー「BOLDER(より大胆に)」を体現している。力強く盛り上がったフェンダー、切れ長のLEDヘッドランプ、大型化されたクラッディング(樹脂製ガード)など、オフロードイメージを強調しながらも都会的な洗練さも併せ持つ。

空力性能にも配慮されており、フロントフェイスの開口部やサイドミラーの形状はCFD(数値流体解析)を用いて設計。これにより、Cd値を向上させながら風切り音の低減も達成している。


■ 名称統一とプラットフォーム進化の連動性

車名変更のタイミングで、プラットフォームも進化を遂げた。クロストレックは、スバル・グローバル・プラットフォーム(SGP)の第2世代版をベースにしており、ねじり剛性やサスペンション取付剛性をさらに強化。これにより操縦安定性と快適性のバランスを高次元で両立している。

振動源の分離や衝撃吸収構造の最適化により、静粛性と乗り心地も向上。NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス)対策においても、従来型XVを超えるレベルが確保されている。


■ 「CROSSTREK」という言葉が示すもの

車名「Crosstrek」は、「Cross(交差する/越える)」と「Trek(旅する/踏破する)」を組み合わせた造語だ。これは都市と自然、日常と冒険、オンロードとオフロードといった異なる世界を自在に行き来できる存在でありたいというスバルの想いを象徴する。

スバルの公式見解でも「冒険心を刺激するデザインと、どんな道も走れる性能が調和した“ライフスタイルSUV”」と位置付けられており、その表現は外観だけでなく、性能や使い勝手にも現れている。


■ 次回予告

次回は、クロストレックの根幹を支える「SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)」の技術的進化について掘り下げます。なぜこのプラットフォームが“世界戦略車”にふさわしいのか──構造と走行性能からその答えを探っていきます。


【連載記事一覧】

第1回:XVからクロストレックへ──名称変更に込められたスバルの戦略的意図

名称統一の背景にあるグローバル戦略、デザインコンセプト「BOLDER」の意味とは?

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第2回:SGPがクロストレックにもたらしたもの──スバル・グローバル・プラットフォームの真価

剛性・静粛性・予防安全まで支えるSGPの構造とその進化に迫る。

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第3回:アイサイトの進化とクロストレックの安全思想──“クルマが人を守る”をどう実現したか

ステレオカメラとDMSの融合による、人間中心設計の実現。

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第4回:e-BOXERの正体──水平対向×モーターがもたらすリアルな実用性

なぜ“あえてマイルドハイブリッド”?実用主義の電動化にスバルの哲学を見る。

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第5回:シンメトリカルAWDとX-MODEの真髄──“行ける道”を広げるスバルの武器

ブレーキLSDとの連携や坂道制御など、AWDの実力を徹底解剖。

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第6回:“触れる・見る・話す”で進化するインターフェース──クロストレックのHMI設計思想

11.6インチディスプレイと音声認識、ドライバーモニタリングの統合思想。

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第7回:世界に広がるクロストレック──市場ごとの評価とユーザー像

北米・欧州・アジア各地でのクロストレックの立ち位置と反応。

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第8回:スバルらしさとは何か──クロストレックが体現する“人とクルマ”の関係

人間中心設計・中庸の哲学・“移動を支える”という姿勢の総まとめ。

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