ロードスターの軌跡【第3回】「第三の挑戦:ロードスターNC、重量化と格闘するロードスター」
2025.04.10
2005年、ロードスターは再び姿を変え、NC型へと生まれ変わった。そこには、「走る歓び」を守りながらも、時代の要請に応えなければならない開発陣の葛藤があった。
● 新プラットフォームの採用と車格の向上
NC型の大きな特徴は、新たにRX-8と共通のプラットフォーム(通称:NEプラットフォーム)を採用した点にある。これにより、ボディサイズは一回り大きくなり、ホイールベースやトレッドも拡大。結果として、室内空間や衝突安全性は大きく向上した。
しかし、この変更は必然的に「重量増」という課題を伴うことになった。車両重量は先代から約100kg増加し、走行性能への影響が懸念された。
● パワーアップと快適装備の充実
これに対応すべく、搭載エンジンもMZR型2.0L直4へと変更され、最大出力は170ps(欧州仕様)に達した。トルク特性の改善により、より扱いやすく力強い走りが実現され、街乗りからワインディングまで幅広く対応する万能型スポーツカーへと進化。
また、パワーリトラクタブルハードトップ(RHT)を採用したグレードも登場し、オープンカーとしての利便性とクーペ的快適性を両立。これにより、オープンカー初心者やファミリーユーザーの取り込みにも成功した。
● 忍び寄る“ピュアさ”への疑問
一方で、「大きく、重く、快適になった」NC型に対して、従来のロードスターファンからは賛否が分かれた。特にNA型を知るユーザーからは「ロードスターらしさが薄れた」との声も少なくなかった。
それでも、マツダは時代に即した選択を行いながら、操縦性やバランスの良さを損なわないよう開発を続けた。実際、NC型はモータースポーツでも活躍の場を広げ、耐久レースやジムカーナなどで多くの支持を集めた。
次回は、ロードスターが再び“原点回帰”を掲げて誕生したND型について、その革新性と挑戦に迫ります。
ロードスターの軌跡 連載一覧
【第1回】「“人馬一体”の原点:初代ロードスター(NA型)誕生秘話」
【第2回】「進化と継承:ロードスターNBとNAの影」
【第3回】「第三の挑戦:ロードスターNC、重量化と格闘するロードスター」
【第4回】「原点回帰と未来志向:ロードスターNDの革新」
【第5回】「これからのロードスター:ND後期、そしてNE型へ?」
【番外編】「異国で生まれた兄弟車──アバルト124スパイダーの光と影」
- 【前の記事】
- 【次の記事】