BYDの挑戦と衝撃【第5回】BYDが切り拓く未来 ─ EV時代の覇者、その先へ
2025.04.21

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BYDは今、単なる“電気自動車メーカー”ではなく、モビリティの未来を創る存在へと進化しようとしている。これまでの連載で触れてきたとおり、電池、プラットフォーム、デザイン、走行性能のすべてにおいて、もはや「価格が安いから売れている」だけの存在ではない。
では、BYDは今後、どのように世界の自動車業界を変えていくのか──
そして、我々日本のユーザーはそれにどう向き合っていくべきなのか?
■「脱・内燃機関」はBYDが加速させる
BYDは2022年に内燃機関モデルの生産を完全に終了し、PHEVとBEV(バッテリーEV)に絞った。これは世界の大手自動車メーカーの中でも極めて早い判断だった。
この動きは業界に衝撃を与えた。なぜなら、トヨタやホンダ、フォルクスワーゲンなどがまだ「HV中心」「内燃機関と並行」の戦略を取っていた時期に、BYDはすでに「脱炭素の先頭」を走り始めていたからだ。
結果、BYDはEVインフラ、バッテリー、車両制御の内製化を一気に進めることができ、競合より一歩も二歩も先を行く存在となった。
■“中国メーカー”の先入観を越えて
かつて日本では、「中国製=安かろう悪かろう」という印象が強かった。だが、今のBYDはそのイメージを一新しつつある。精度の高い組み立て品質、先進的なインテリア、安全性能の進化──。
特に、国内試乗イベントやモーターショーでのBYD車の評価は高く、**「このままいけば、日本のEV市場を塗り替える可能性もある」**という声も聞こえる。
■クルマの“概念”を再定義する存在
BYDは今後、以下のような方向性に動き出している:
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ロボタクシー・自動運転への投資拡大
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EV+AIの融合による次世代モビリティの構想
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太陽光・家庭用蓄電池との連携による“暮らしとEVの統合”
つまり、「移動のための道具としてのクルマ」から、「生活と一体化したインテリジェントなプラットフォーム」へ──BYDは、クルマの概念そのものを変えようとしている。
■日本メーカーへの警鐘、そして期待
このBYDの急速な進化は、日本の自動車業界にとって強烈な警鐘ともいえる。国内ではいまだHV中心の開発体制が根強く、EVへのシフトは欧米中に遅れている。
一方で、これを逆に捉えれば、日本車の「走りの質」や「信頼性」「整備網の強さ」とBYDの「電動技術・コスト力」が競い合うことで、EV全体の進化が加速する可能性もある。
いま我々が目の前で見ているのは、単なる“新しいメーカーの登場”ではなく、100年に一度のパラダイムシフトの中心にいる企業──それがBYDなのだ。
【連載まとめ】
回 | 内容 |
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第1回 | BYD誕生の背景とEV業界への参入 |
第2回 | ブレードバッテリーとe-Platformの技術解説 |
第3回 | 世界・日本市場への展開と戦略 |
第4回 | 各モデル試乗レビュー(ATTO 3 / DOLPHIN / SEAL) |
第5回 | 業界への影響と未来展望 |
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