BYDの挑戦と衝撃【第4回】走りはどうか?BYDのクルマとしての実力を検証する

2025.04.21

EVとしてのスペックだけでなく、クルマとしての“総合力”が問われる時代。価格が安くても、走りが凡庸ではユーザーの心は動かない。果たして、BYDのEVは単なる「安いEV」ではなく、“乗って楽しい一台”と言えるのだろうか?

ここでは、日本市場に導入されたATTO 3、DOLPHIN、SEALの3モデルを、モータージャーナリストの視点でレビューしてみたい。


■ATTO 3:スポーティかつ親しみやすいコンパクトSUV

  • モーター出力:150kW(204ps)

  • 航続距離:470km(WLTC)

  • 駆動方式:FF

  • 価格帯:440万円前後

【試乗印象】

アクセルに足を乗せた瞬間のレスポンスがいい。LFPバッテリーを積んでいるが、出足のトルク感は申し分なし。サスペンションはしっかり目で、やや欧州車的な味付け。SUVらしい見晴らしと居住性に加え、フレキシブルな荷室も魅力。

内装の遊び心(ギターの弦のようなドアポケットなど)もユニークで、若いファミリー層にもマッチする一台だ。


■DOLPHIN:日常を変えるスマートEV

  • モーター出力:70kW or 130kW

  • 航続距離:400〜476km

  • 駆動方式:FF

  • 価格帯:363万円〜

【試乗印象】

軽快、かつ静粛性が高い。低重心の恩恵でコーナーでの安定感があり、「EV特有の腰高感」はほとんどない。ボディサイズは日本の道路事情にぴったり。何より、全体の完成度が高い。エアコン、ディスプレイ、カメラ類などの機能も抜かりなく、価格を考えれば「国産EVよりむしろお買い得」と感じる人も多いはず。


■SEAL:スポーツセダンの新たな刺客

  • モーター出力:最大390kW(約530ps・AWDモデル)

  • 航続距離:640km

  • 駆動方式:RWD/AWD

  • 価格帯:約530万円〜

【試乗印象】

驚いたのは加速性能。ローンチ時の蹴り出しは、かつてのBMW M3に匹敵するレベル。モーターサウンドも人工的ながら心地よく、EVでありながら“ドライビングプレジャー”を忘れていない。ステアリングは正確で、車体制御も優秀。

テスラ・モデル3のライバルとされるが、快適性と質感ではSEALがやや優位とも感じられる。


■共通項としての「上質なEVらしさ」

3台に共通するのは、「EVらしい滑らかな走り」「静粛性」「シームレスな操作感」の三拍子。加えて、OTA(無線アップデート)による機能拡張や、Apple CarPlay/Android Autoなどのスマートフォン連携もスムーズで、デジタル時代のユーザーをしっかり見据えている。


次回、最終回 第5回では「BYDが自動車業界に与える影響とこれからの展望」についてお届けします。

【連載まとめ】