BYDの挑戦と衝撃【第3回】BYDのグローバル戦略と日本市場進出のリアル

2025.04.21

「EVで世界をリードする」──そんな言葉は今や誇張ではない。2022年にはトヨタを抜いてEV・PHEVの世界販売台数1位を記録。BYDは名実ともに“EVの巨人”として君臨し始めた。

だが、それは単なる中国市場での成功だけではない。BYDは着実に“世界”を意識している。そしてついに、日本市場への本格上陸を果たしたのだ。


■グローバル展開:60カ国以上、100都市超

BYDは現在、欧州、南米、ASEAN諸国をはじめとした60カ国以上でEV販売を展開。特に注目されたのは、EVの本場・ノルウェーでの成功だ。SUV「Tang EV」は、2021年に投入され、テスラと肩を並べる販売台数を記録。

また、バス・商用車分野でも圧倒的なプレゼンスを誇る。BYD製の電動バスは、ロンドン、ロサンゼルス、シドニーなど世界各都市で導入されており、「市民の足」として確かな信頼を築いている。


■日本進出は“EVの黒船”か?

BYDの日本進出は2023年。まずはSUV「ATTO 3」、コンパクトEV「DOLPHIN(ドルフィン)」、そしてセダン型の「SEAL(シール)」を投入。現在、全国にディーラー網を拡大中で、2025年には100店舗体制を目指すとしている。

日本のユーザーが驚いたのは、その価格と完成度のバランスだ。

たとえば「DOLPHIN」は300万円台で航続距離400km以上。内外装の質感も高く、インフォテインメント系の操作性も優秀。国産EVと比べても**“買い得感”のあるEV**として注目されている。


■日本市場の壁に挑む──「安心感」の構築

とはいえ、日本市場は一筋縄ではいかない。信頼性、ディーラーのサービス網、リセールバリュー、そしてブランドイメージ…。BYDはそれらの“日本のこだわり”に丁寧に応えようとしている。

たとえば:

  • 国内専用の保証体制を整備

  • 24時間対応のコールセンター設置

  • 日本語UIへの最適化とOTAアップデート対応

単なる価格勝負ではなく、「丁寧な信頼構築型アプローチ」をとることで、日本ユーザーの心理的ハードルを下げようとしている。


次回の第4回では、クルマとしてのBYD車の実力を検証し、走行性能、乗り心地、デザインなどをジャーナリストの視点でレビューします。

【連載まとめ】