大阪万博で出会える近未来の乗り物たち【第5回・最終回】万博のその先へ — 社会実装と未来都市のビジョン
2025.04.24

画像引用:大阪万博公式サイト
万博のその先へ ― 社会実装が始まる未来モビリティの行方
大阪・関西万博は2025年という未来の象徴として、最先端のモビリティ技術が一堂に会する“未来都市のショーケース”となっています。しかし、この祭典が目指すのは展示にとどまらず、「社会実装」、すなわち私たちの暮らしにそれらがどのように定着していくかです。今回は、万博の先にあるモビリティの未来像を探ります。
空飛ぶクルマは日常になるのか?
第1回で紹介した「空飛ぶクルマ(eVTOL)」は、すでに国内外で実証飛行が始まっており、2025年の万博をきっかけに関西空港〜大阪市内、さらには観光地への定期航路構想も動き出しています。
社会実装には、インフラ整備(離発着ポート)、航空法制、パイロットの免許制度など、ハード・ソフト両面の課題がありますが、万博を経て一気に注目が高まることでしょう。近未来では「空のタクシー」が都市部の渋滞を緩和する存在になるかもしれません。
自動運転バスやEVの展開は?
自動運転バスは、すでに一部の地域で導入が始まっており、万博後は高齢化が進む地方都市での活用が期待されています。とくに医療施設やショッピングモール、鉄道駅を結ぶ「コミュニティモビリティ」としての運用は現実味を帯びています。
一方で、電動化と同時に「走行中給電」や「道路インフラとの通信連携」など、新たな技術要素も万博で披露され、スマートシティとの連携がより重視されていくでしょう。
パーソナルモビリティと多様性の実現
WHILLに代表されるパーソナルモビリティは、高齢者や身体障害者だけでなく、あらゆる人の「移動の自由」を保障するための存在として広がりを見せています。都市部の駅や空港ではすでに導入が進んでおり、今後は観光地や公園、大学構内などへの拡大も見込まれています。
「すべての人が移動できる社会」──このビジョンは、SDGsの理念にも深くリンクしており、万博以降も継続的な取り組みが期待されています。
AIロボットによる都市サービスの一部化
配膳ロボット、警備ロボット、案内ロボットなどは、すでに商業施設やホテルで活躍しており、万博での活用がその価値をさらに証明しました。今後は、自治体と民間企業が連携し、公共サービスの一部をこれらのロボットが担う場面が増えていくと予想されます。
特に「無人で動く=人件費が抑えられる」という観点から、持続可能な行政運営や、過疎地域の社会インフラ維持の解決策として注目されています。
万博は未来の「起点」
大阪・関西万博で披露された近未来の乗り物たちは、すぐに全てが普及するわけではありません。しかし、そこで得られた技術・知見・市民の受容性こそが、次の時代の都市や社会をかたちづくる原動力となります。
モビリティは単なる「移動手段」ではなく、人の暮らし、働き方、福祉、教育、防災などあらゆる分野に影響を及ぼす、社会変革の鍵なのです。
これからも、モータージャーナリストとして“未来を走る乗り物”の進化を追いかけていきたいと思います。
大阪万博で描かれた未来が、そう遠くない明日として現実のものになる──そんな期待を胸に、次なるステージに目を向けていきましょう。
特集記事 大阪万博で出会える近未来の乗り物たち 一覧
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第2回:水素で動く船と自動運転EVバス — 陸と海を変えるエコ・モビリティ
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第3回:パーソナルモビリティの進化 — 移動を「選べる」社会へ
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第5回:万博のその先へ — 社会実装と未来都市のビジョン
近未来モビリティは社会にどう浸透していくのか?都市交通・福祉・物流の未来を占う総まとめ。
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