通勤快速に最適なポルシェはどれか?911 vs 718ボクスター vs タルガ徹底考察

  • 太田哲也
2026.05.27

911か、718ボクスターか、それともタルガか

アルピーヌA110に、例のエアコン問題があって最近ほとんど乗っていない。このまま手放す可能性もあるので、次なる“通勤快速”を検討し始めている。

やはり自分のイメージとして、まず頭に浮かぶのはフェラーリだ。

でも昨今のフェラーリは高価になりすぎた。さらに、以前フェラーリ360を通勤車として使って失敗した経験も思い出す。そう考えると、「フェラーリはもう違うかな」という気持ちもある。

だったら、いっそイタリア車から離れてみるのもありかも。

そう考えたときに浮かんだのが、ポルシェだった。

以前はピンとこなかったポルシェを再検証

実はその昔、現役レーシングドライバーだった頃に、ティプトロニック(AT)仕様のポルシェ911に半年ほど乗っていたことがある。でも、どうもしっくりこなかった。当時の自分には、「普通」過ぎた。

ただ、今振り返ると、クルマそのものというより、自分の立場の問題も大きかった気がする。当時はフェラーリでレースを戦っていて、フェラーリからサポートも受けていて、そんな立場で911に乗っていると、周囲から「なぜ?」という視線で見られている気がして、落ち着かなかったのだ。

でも今は昔と違ってプロレーサーじゃないし、誰に気を遣う必要もない。何に乗ったっていい年齢だし、と思っている。

だったら、改めてポルシェを検討してみてもいいんじゃないか。

では、いまポルシェを買うなら何がいいのか。

少し力が抜けたポルシェがいい

用途としては、通勤快速。サーキットはたまに走れればいい。だからGT3のような“ガチ”なモデルは求めていない。むしろ少し力が抜けているくらいがいい。

そう考えると、オープンカーだ。

ただ、フルオープンには少々不安もある。最近は電動キックボードや自転車が飛び出してくる時代だし、安全性が気になる。

そこで浮かんだのが、911タルガという選択肢だった。

妙に肩肘張っていない雰囲気がある。

911なのに、911らしい“偉そう感”が薄いのもいい。

普通の911って、少し威圧感がある。

「俺は911だぞ」という空気をまとっている感じがするのだ。

でもタルガには、それがない。

少しリラックスしていて、肩の力が抜けていて、それでいて安全性もある。通勤車として考えると、意外とバランスがいいのかもしれない。

911タルガには4駆しかないのが問題だ

ただ、問題は四輪駆動だ。その壁にぶち当たる。

なぜ四駆なのかというと理由があった。

その昔、タルガは、「スポーティでもない」「フルオープンでもない」という中途半端な存在に見られていた。人気もそれほどではなかった。

ところがポルシェがタルガのオーナー層をリサーチしてみたところ、意外にも通勤や街乗りで使っている人が多かったらしい。そこで、「だったら全天候型の四輪駆動が合うだろう」という判断になったそうだ。

現在の911タルガは、全車四輪駆動/PDK仕様のみ。カブリオレのように後輪駆動+マニュアルという選択肢は存在しない。

個人的には、そこまで四駆にこだわらなくてもいい気がする。

実は僕は四輪駆動があまり好きではないのだ。

もちろん雪道や悪天候ではメリットがあることは認める。でもヨーロッパはまだしも、東京の通勤で、四輪駆動の恩恵を感じる場面に遭遇したことがほとんどない。その割に、車重は増えるし、燃費も悪くなる。動きも少し重たく感じる。

基本的に僕は、ライトウェイトスポーツカーが好きなのだ。

軽いポルシェのオープンカーなら……718ボクスターか!

そう考えると、やはり718ボクスターが、自分の用途には最適な気がしてくる。

サイズ感もちょうどいい。世田谷の狭い住宅街でも気を遣いすぎずに済みそうだし、パワーも必要十分。オープンで気持ちよく、しかも軽快だ。

でも、ここで妙な問題が出てくる。

KEEP ON RACING WEBのライター、ハッサンと話していたら、こんなことを言われた。

「太田さんが乗るなら911でしょ」

さらに彼は続ける。

「ポルシェ界って、ヒエラルキーがかなり明確なんですよ。911っていう“ボスキャラ”がいる。だから信号待ちで3941万円の911ターボSカブリオレに並ばれたとき、太田さんが718ボクスターGTS 4.0だったら、向こうのドライバーに“太田さんに勝った!”と思われちゃいますよ。信号が青になるまで、横を向けない感じになるんです」

さらに過激な911オーナーになると、

「ボクスターやケイマンはポルシェじゃない」

なんて言う人までいるらしい。

でも、そんなことを気にしていたら、本当に好きなクルマに乗れないじゃないか。

ポルシェのヒエラルキーに惑わされる

ヒエラルキーから脱出するために、2065万円の718スパイダーRSを選ぶという手もある。でも、それだったら後輪駆動/マニュアルの911カレラTが2006万円で買えるので、そちらのほうが“ポルシェらしい選択”にも思えてくる。

しかも最近の911は、大きく見えるわりに、実際に使うとそこまで巨大ではないらしい。都内でも「思ったより普通に使える」という声は多い。

だったら911でもいいのか?

いや、でも自分の用途にぴったり合っているのは、やっぱり718ボクスターのような気もする。

いっそのこと、昔の空冷ポルシェを狙うという手もあるかも。でも中古の空冷は、どうしてもメンテナンス問題がついて回る。通勤車として使うなら、やはり新車のほうが安心だろう。

「いつの時代でも、最新のポルシェが最良のポルシェ」

とはよく言われるが、確かにそれも一理ある。

……などと考えていたら、頭がこんがらがって何が何だか分からなくなった。

結局いまの自分も、昔と同じように周囲の視線を気にしている気がしてきた。

「誰に気を遣う必要もない」

なんて言いながら、911のヒエラルキーを気にし、ボクスターだとどう見られるかを考え、タルガなら“偉そうに見えない”などと悩んでいる。

結局、クルマを運転しているのではなく、“世間の視線”を運転しているのかもしれない。

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