進化し続けるA110 ― S、GT、R、そしてサーキット仕様R-GTまで|A110連載第4回
2025.05.09
〜フランス流ライトウェイトスポーツの深化と分岐〜
【導入】
2017年に鮮烈なデビューを果たしたアルピーヌA110。だが、その魅力は「1モデルで完結する」ものではなかった。
開発チームはそのポテンシャルをさらに拡張し、用途や好みに合わせた複数のバリエーションモデルを次々と送り出してきた。
本稿では、A110の“深化”を象徴する各モデルの特徴とキャラクターの違いを明らかにしていく。
【1】A110 Pure / Légende ― ベーシックこそが本質
まず最初に登場したのが、A110 Pure(ピュア)とLégende(レジェンド)。両者は同じ252psエンジンを搭載しながら、仕様が異なる。
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Pure: 軽量重視(1,102kg)、スパルタンなシート、17インチホイール
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Légende: 快適性寄り、レザー内装、パワーシート、18インチ装着
多くのジャーナリストが「A110らしさを一番体感できるのはPure」と評する。重量増の少ない快適仕様Légendeも、日常性とドライビングプレジャーの両立を狙った完成度の高い1台だ。
【2】A110S ― ハードコア路線の象徴
2019年に登場したのがA110S。エンジン出力は300psへと強化され、足回りやタイヤ、ブレーキにも大幅な手が加えられた。
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最高出力: 300ps(1.8L直4ターボ)
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足回り: 専用ダンパー&バネ、車高 -4mm、トーションバー強化
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タイヤ: ミシュランPilot Sport 4からCup 2への換装可能(19インチ)
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ブレーキ: ブレンボ製高性能キャリパー
Sはサーキット走行にも対応できる硬質な仕上がり。Pureより100kgほど重くなるが、それ以上に安定感と応答性を増している。
「走りの芯が通った感じ。サーキットでも公道でも満足度が高い」
(モータージャーナリスト・山田弘樹氏レビュー)
【3】A110 GT ― 上質志向のツアラー仕様
2021年に登場したA110 GTは、“速さと上質”のバランスを追求したモデル。エンジンはSと同じ300psだが、足回りはよりマイルド。
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特徴: Sの出力+Légendeの快適装備
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ターゲット: 高速道路主体、長距離ユーザー
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車重: 約1,140kg
ステアリングやアクセルの味付けも穏やかで、“グランツーリスモ”の名に恥じない懐の深さを感じさせる。
【4】A110 R ― 軽量化の極致、サーキット直系モデル
2022年に発表された**A110 R(Racing)**は、軽量化とエアロ性能の強化に特化した特別モデル。
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車重: わずか1,082kg(A110S比 -34kg)
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カーボンパーツ: ボンネット、ルーフ、リアスポイラー、バケットシート
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足回り: 調整式ダンパー、専用ロールバー、セミスリックタイヤ
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0-100km/h加速: 3.9秒(シリーズ最速)
「ポルシェGT4 RSとは違う、もっと“軽快で理知的”な速さがある」
(Top Gear誌)
【5】A110 R-GT ― ラリーの血を引くサーキット専用車
競技モデルとして登場したA110 R-GTは、FIA規定のR-GTカテゴリー向け。主にヨーロッパの舗装ラリーで活躍している。
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駆動方式: RWD(後輪駆動)
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パワー: 約300ps+レース用ECU
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特徴: ワイドボディ、強化サスペンション、ロールケージ装備
市販車の延長線でありながら、WRC時代の精神を現代に引き継ぐ存在として注目されている。
【結び:次回予告】
A110のラインナップは、「軽さの哲学」を軸に多様な方向へ枝分かれしている。
最終回となる次回は、EV時代を迎える中で、アルピーヌが描く次世代スポーツカー戦略と、A110が自動車史に残した足跡を考察していく。
「アルピーヌA110再生の軌跡 ― 伝説を現代に蘇らせたスポーツカーのすべて」
【連載目次】
第1回:「復活した伝説 ― 新生アルピーヌA110が誕生するまでの背景」
第2回:「軽量×リアルスポーツの哲学 ― アルピーヌA110開発思想の核心」
第3回:「モータージャーナリストが唸った! アルピーヌA110の走りと乗り味」
第4回:「進化し続けるA110 ― S、GT、R、そしてサーキット仕様R-GTまで」
第5回:「アルピーヌの未来 ― EVシフト時代におけるA110のポジションと後継構想」
番外編1:オーナーレビュー|アルピーヌA110の実体験に基づく評価
番外編2:アルピーヌA110を買う前に知っておきたい5つの注意点
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