アバルト595の進化と魂 【番外編2】アバルト595 サーキット仕様オーナーの声

2025.04.21

たかが595、されど595。ミニサーキットの主役になるということ

アバルト595は、街乗りに似合うホットハッチであると同時に、“本気の遊び場”にも耐えうるパッケージを持つ。

今回は、そんな595を**“週末レーサー”に育て上げた2名のオーナー**に話を聞いた。


■ Case 1:石井健吾さん(静岡県・30代・自営業/週末サーキット通い歴6年)

車種:Abarth 595 Competizione(2017年モデル・MT)/カラー:レコードグレー

「本気で遊びたい人には、FRや四駆じゃなくても“FF軽量ハッチ”が一番面白い」

石井さんが通うのは富士のジムカーナコースや筑波2000。

軽快なハンドリングと“回してナンボ”のエンジンフィールが気に入り、国産ホットハッチから乗り換えた。

「サスとタイヤを替えるだけで、グリップ感も姿勢も別物になります。1コーナーで“入っていく勇気”が持てるのは、短いホイールベースのアバルトならでは。」

現在の主なモディファイは以下の通り:

  • KW車高調Ver.3

  • semi-slickタイヤ(Yokohama A052)

  • ロールケージ(Bピラー止め)

  • ECUリマップ(約185ps仕様)

  • ブレンボ純正キャリパー→社外パッド+冷却ダクト追加

「パワーでねじ伏せるんじゃない、限界を“対話しながら攻める”のがアバルトの真骨頂です。」


■ Case 2:中村美咲さん(福島県・40代・工場勤務/地方ジムカーナ選手)

車種:Abarth 595 Esseesse(2020年モデル)/カラー:ビアンコ・ガーラ+ラリーストライプ

「“女だから”って言われたこともあった。でもこのクルマに乗り換えてから、タイムで黙らせてます(笑)」

中村さんはJAF公認の地方戦でジムカーナに参戦中。以前はNAロードスターに乗っていたが、軽快さと剛性感を兼ね備えた595に魅了され、競技車両としてチューニングを開始。

  • LSD(クスコ製)

  • 純正マフラー→RECORD MONZAに交換

  • フットレスト位置調整とブレーキタッチ改善

  • ストリッピング(内装軽量化)+バッテリー小型化

「FFなのにリアが“生きてる”んですよ、595は。姿勢をちゃんと作ってあげれば、クルマが自然に回ってくれる。」

特にレコードモンツァのサウンドとブリッピングの瞬間が“気持ち良さのピーク”だと語る。

「0.5秒を削る遊びにこれだけ真剣になれるって、幸せですよね。」


■ コラム:アバルト595をサーキットで楽しむための“基礎構成”

カスタムポイント 効果
足まわり(車高調) ロール抑制とトラクション強化
タイヤ選定 ミニサーキットならsemi-slick推奨
ECUチューニング 中高速域の伸びとトルク補完
LSD 特にFF車ではタイムアップに直結
冷却対策 サーキットでは吸排気温管理が必須

■ まとめ:アバルト595は“闘える”コンパクトスポーツだ

確かに、アバルト595は絶対的な馬力では国産ターボや欧州ホットハッチに敵わない。

だがそれでも、軽さ・レスポンス・サイズ感・個性という武器で、“走りの楽しさ”においては並ぶ者なし。

「自分のスキルと向き合える車」

「コーナー1個1個がイベントになる車」

「刺激を求めて、週末が待ち遠しくなる車」

それが、サーキットで戦うアバルト乗りのリアルな声である。

 


連載目次:小さな毒蛇の咆哮 ― アバルト595の進化と魂

【第1回】アバルトの起源と“チューンド500”の誕生
【第2回】ブランドの消滅と復活への胎動(1980〜2000年代)
【第3回】2008年、アバルト595として復活
【第4回】特別仕様車と“イタリア流ホットハッチ”の確立
【第5回】EV時代を前に、小さな咆哮はどこへ向かう?

【番外編1】アバルト595 オーナーのリアルボイス
【番外編2】アバルト595 サーキット仕様オーナーの声
【番外編3】アバルト595 vs アバルト500e 乗り比べオーナー対談