ホンダのEV方針転換に見る日本車の未来|大手メディアの論調と自動車開発の真実

  • 太田哲也
2026.08.03

自動車メーカーのEV戦略は見直しがすすむ

ホンダが2021年に、2040年までに新車をすべてEVと燃料電池車にすると宣言したとき、正直に言えば、そんな極端なことを「本気でやるの?」と思った。

自動車産業は単純ではない。市場も、技術も、インフラも、世界情勢も絶えず変化する。ひとつの答えに賭けるには、あまりにも不確定要素が多い世界だ。

当時の僕は、あの宣言は企業の将来像を社内外に示すメッセージとしての意味合いが強く、「EV一辺倒」で一直線に進む話ではないと受け止めていた。しかし先日、ホンダはその構想を大きく見直すと発表した。

「本気だったの?」

結果論ではあるが、「やはりそうなるよね」というのが率直な感想だ。

新聞の社説では、日本車は語れない

僕が気になったのは、ホンダの発表そのものより、大手メディアの報じ方である。

以前、日経新聞は「これから生産するクルマはすべてEVにしなければならない」という趣旨の社説を掲載していた。ところが、そのときの論調には触れず、今回はホンダの方針転換を批判する論調が目立つ。なんだかなあ、と思ってしまう。当時から僕は、「自動車業界をずいぶん単純に見ているな」と感じていた。

そして今度は、「日本車の競争力復活」と題した社説で、「コスト低減のためには汎用部品を調達すべきだ」と提案している。

一見するともっともらしい。しかし、現場で起きていることを見ると、必ずしもそうではない。

例えばスバルはトランスミッションの内製化を進めている。一方、マツダは部品価格だけを競わせるやり方から距離を置き、サプライヤーと一緒により良い部品を作ることに力を入れている。

つまり、「できるだけ共通部品を使う」という発想ではなく、「どうすれば自社ならではの価値を作れるか」という方向へ舵を切っているのだ。そこには厳しい生存競争を生き抜く原理がある。

競争力を決めるのは、カタログに並ぶスペックだけではない。設計思想や製造技術、耐久性、フィーリングなど、数字では表せない部分の積み重ねが、最終的な品質や走りの差となって現れる。そうした「中身」についてモータージャーナリストにはわかっても、一般ユーザーにはそこまではわからないという意見もあることは承知している。でも、意外とユーザーはわかっていると思うのだ。

そういう観点で、日本メーカーは差別化できる部品を自社で開発したり、サプライヤーと共同で磨き上げたりすることを重視している。

日本車が生き残る道とは

もちろん、中国メーカーの勢いは目を見張るものがある。コスト競争力では、日本メーカーが追いつくのは容易ではないだろう。スペックだけを見れば、日本車との差も急速に縮まっている。

しかし、クルマ全体としての完成度や耐久性、長年積み重ねてきたモノづくりのノウハウには、まだ日本メーカーにアドバンテージがあると僕は感じている。

日本車が生き残る道は、価格競争ではない。走りや質感、耐久性まで含めた「クルマとしての完成度」をさらに高め、その「メーカーならではの個性」を磨き続けることではないか。

だからこそ、「汎用部品をもっと使えば競争力が戻る」という議論には違和感を覚えるのだ。

開発現場は、コストを削ることだけではなく、どうやって他社には真似のできない価値を生み出すかを日々考えながらクルマを作っている。それを僕らは目の当たりにしている。

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