RRなのに、なぜポルシェは熱に強いのか?

ポルシェは、サーキットをガンガン走ってもオーバーヒートしにくい。
しかも、エンジンが積まれているのはリアだ。RRというレイアウトは、一般的にはフロントエンジンよりも冷却面では不利だ。それなのに、ロングディスタンスのレースで走り続けても、ポルシェは冷却面で大きな不安を感じさせない。
なぜなのか。
そもそも、市販スポーツカーをサーキットに持ち込んで走らせてみると、オーバーヒートに悩まされるケースは少なくない。僕自身もいろいろなクルマをサーキットで走らせてきたが、フェラーリ355や360、アルファロメオ4Cもそうだった。
サーキットでは冷却性能の差がはっきり出る

公道では何の問題もなく走っていても、サーキットではエンジンに大きな負荷がかかり続ける。すると、街中では見えてこなかった冷却性能の差がはっきりと出てくる。
以前、ニスモが製作したR35型GT-Rのワンメイクレースカーをやるという話があったが、結局成立しなかった。整備に携わっていたメカニックに聞いたところ、そのレースカーは熱がこもってしまい、レースには不向きだったのだという。
そうした経験があるだけに、RRというレイアウトでありながら、サーキットを走り続けても熱に強いポルシェはすごいと思う。
水平対向エンジンの有利不利

ポルシェが搭載する水平対向エンジンは、左右にシリンダーが広がっている。そのためエンジン全体の表面積が大きく、放熱性が良い。これは走行中にエンジンを冷やすうえでは有利な特性だろう。
ただし、放熱性が良いことは、始動時には不利な面もある。
エンジンは冷えているときより、適正な温度まで暖まったほうが燃焼効率が上がる。ところが水平対向エンジンは放熱しやすいため、始動してから適正な温度まで暖まるのに時間がかかる。
スバルの水平対向エンジンは燃費がよくないと言う人がいるが、この特性も関係しているかもしれない。
「冷えやすく」「暖まりにくい」

日本の街中では、ストップ&ゴーが多い。近距離の移動では、エンジンが十分に暖まる前に目的地に着いてしまうこともある。そうした使い方では、水平対向エンジンの放熱性の高さが、燃費面では不利に働く場合がある。
つまり、水平対向エンジンは「冷えやすい」という長所と、「暖まりにくい」という側面を同時に持っている。
そう考えると、RRという冷却面では厳しいレイアウトに水平対向エンジンを積みながら、サーキットを走り続けても熱に強いポルシェは、やはり興味深い。
長年の活動による知見の高さ

もちろん、水平対向エンジンの構造だけで説明できるわけではないだろう。冷却系そのものの設計や、熱をエンジンルームから逃がす方法など、ポルシェにはRRの弱点を補うためのさまざまな工夫がある。
それはやはり長年レースを続けてきたこと、レースユーザーに向けて販売してきたことによる、知見の高さなのかもしれない。最大出力を出すこと自体はできても、それに見合う冷却性能を、気候の違う地域で安定して担保するのは並大抵のことではないはずだ。
長距離レースを走り続けても冷却面で破綻しないポルシェの水平対向エンジンには、まだ僕が知らない「熱への強さ」の秘密があるのかもしれない。
僕が新しい通勤車にポルシェを検討しているのも、このタフな水平対向エンジンに興味を持つようになったからだ。
PHOTO/PORSCHE AG
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