ポルシェの専用コースで「911カレラ GTS」に乗る

房総半島が、“走りの聖地”になりつつある。
袖ヶ浦フォレスト・レースウェイの近くに、コーンズとポルシェがそれぞれ専用コースを持つというのだから、首都圏のクルマ好きにはたまらない話だ。
今回訪れたのは、そのポルシェの新しいテスト施設「PEC(ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京)」で、待っていたのが――ポルシェ911カレラ GTS。「911がついにハイブリッド?」と聞いたとき、正直少し違和感を覚えたが、実際にハンドルを握ると、納得させられる走りがそこにあった。
3.6リッター+Eターボ、数字以上に緻密

従来の3.0リッターから3.6リッターへ排気量を拡大。そこに400Vリチウムイオンバッテリーと電動ターボ(Eターボ)を組み合わせる。システム出力は541PSだ。
Eターボがタービンを事前に回しておくため、アクセルを踏み込んだ瞬間から加速が立ち上がる。重量増はわずか約50kgに抑えられ、リアシートを外したクーペ仕様では1590kgにとどまる。
この数値だけを見れば「軽量化頑張ったね」と言いたくなるが、実際に走らせるとやはり車体の重みは感じる。しかし、それを打ち消すように低回転からのモーターアシストがトルクの谷を埋め、結果として“加速での重さを意識させない”。
極低回転から湧き上がるトルク

試乗コースの中で、特に印象的だったのは2000rpm前後からの蹴り出し。踏んだ瞬間、モーターの力でクルマが前に押し出される。
この“ターボの下を埋める加速”は確かに新しい911の魅力だ。ただ気になるのは――冷却だ。
Eターボや高電圧バッテリーを抱える構造上、熱のコントロールは極めてシビアなはずで、長時間のサーキット連続走行では不安もあったが、90分間の試乗においては問題は生じなかった。
さすがポルシェ、冷却対策にも抜かりないのだろう。「911で真夏のサーキットを攻めたい」派にとっては気になるポイントだが、それは次の機会を期待したい。
低ミューでわかる“電気の滑らかさ”

テストコースでは、水を撒いたツルツル路面で定常円旋回するメニューもあった。ここでも極低回転から発生するトルクが功を奏す。
微妙なアクセルワークを行うことが可能となり、コントロールがしやすかった。
3速で曲がれるワインディング、でも軽快とは違う

ニュルブルクリンクのコーナーを模したというワインディングロード区間では、通常なら2速で抜けるようなタイトコーナーを3速でクリアできた。低速からの厚いトルクが可能にする走りだ。
ただし、“リアが踊るような軽さ”ではなく、バッテリーの重さによる低重心でしっかり沈み込むような安定感。どちらが良いかは好みだが、「スポーツカー」というよりも、「ハイパフォーマンスGT」に近いフィールだと感じた。
ハイブリッドでも“911”。“未来の911”を味わえる特権

走り終えて感じたのは、ハイブリッドでも確かに“911の血”が流れているということ。ステアリングからの情報量は健在で、電子制御が介入しても不自然さはない。
ただ、その完成度には代償もある。それは価格だ。
911カレラ GTSの日本導入価格は2,379万円~。もっとも、この価格で手に入るのは性能だけでなく、“未来の911”を誰よりも先に味わえる特権かもしれない。
〇スペック
ポルシェ911カレラ GTS
●全長×全幅×全高:4,555mm×1,870mm×1,295mm
●ホイールベース:2,450mm
●車両重量:1,620kg(PDK/リアシート有り)
●エンジン:水平対向6気筒DOHC+Eターボ
●排気量:3,591cc
●最高出力:357kW(485PS)/7,500rpm
●最大トルク:570N・m
●駆動用モーター:Eターボ
●最高出力:41kW
●駆動用バッテリー:リチウムイオン電池
●システム出力:398kW(541PS)
●すステムトルク:610Nm
●トランスミッション:8速PDK
●最高速度:312km/h
●0-100km/h加速:3.0秒(スポーツクロノパッケージ装着車)
●車両価格:2,379万円〜












