日産GT-R終了のタイミングでホンダが出した答え

2007年のデビューから18年間生産されてきた日産GT-Rがついに終了した。
そのタイミングでホンダはプレリュードを復刻させてきた。偶然とはいえ、ホンダと日産の“元気の方向”が違うことを感じさせられる。
ではなぜ、このSUVやミニバン全盛、そして電動化に進む時代にあえてスポーツクーペを出してきたのか。そこにはホンダの危機意識があった。
ホンダが抱いた危機感と、プレリュード復刻の理由

世の中の雰囲気として、ホンダという会社は特に若い層から“軽とミニバンのブランド”と捉えられているようだ。僕でさえそう思ってしまうほどで、ホンダ社内でもその点への危機意識が強かったそうだ。
だからこそ、ブランドイメージの再構築を狙って、スポーツクーペを投入することにしたらしい。50〜60代にとってプレリュードといえば、特別の響きがある。とくに2代目・3代目はデートカーと言われ、当時「六本木のカローラ」と言われたBMW 3シリーズとともに、社会現象を反映していた。僕自身も、あのリトラクタブルライトの3代目が好きだ。
新型は、その“プレリュードらしさ”を残しつつ、電動化時代へスポーツクーペをスライドさせた印象だ。
新技術を積極的に盛り込んだ点も特徴的である。ハイブリッドシステム“e:HEV”を軸に、制御技術や車体運動そのものを進化させ、単なる復刻ではなく“新しい走り方”を提示している。
ターゲットは新旧ホンダファンとされているが、617万9800円という価格帯を考えれば、最初に手にするのはホンダ愛の強い人たちになるだろう。
自転車の国 サイクルスポーツセンターでの試乗で限界性能を見極める

今回の試乗会は伊豆の「自転車の国 サイクルスポーツセンター」。
本来は自転車のコースだが、この日ばかりは空気が違った。会場には大勢の開発者たちが待っていた。“クローズドコースで走りをしっかり試してほしい”というメッセージが与えられている気がした。彼らの表情にはホンダの本気と自信が漂っていた。
その走りを支えているのが、今回追加された新しい電子制御群だ。
モーターの瞬発力を引き出すための制御ロジックや、旋回時の姿勢づくりまで含めて、“電動車”を“走りのクルマ”に変えているのが特徴となる。
走らせて感じたこと ― タイプRの素性と、ホンダの新しい制御

走りはというと、シビックタイプRのシャシーをベースに専用セッティングを施してあるため、応答性のよいハンドリングと意外なほど路面からのあたりが柔らかい乗り心地が両立していた。
タイプRよりもショートホイールベース&ワイドトレッドの組み合わせで、旋回性が高められている。実際に走らせると“素直に曲がって、素直に抜ける”動きがあった。
その挙動を支えるのが、片輪にブレーキを当ててアンダーステアを制御する「アジャイルハンドリングアシスト」。
従来は加速時だけだったが、減速時にも制御を行うのが新しい点だ。
ブレーキング時に作動するのは効果絶大だった。なぜなら、加速時はアンダーが出たらアクセルを戻せばいいから、それほど制御のありがたみを感じない。ところが減速時にオーバースピードでアンダーを出してしまったら、スピードが落ちるまでなすすべがない。その状況で「曲げてくれる」のである。
さらにこの効き方が自然で、鼻先がスッと向きを変えてくれるから安心できる。思わず“オレ、運転うまくなった?”と錯覚しそうになるほどだ。
むしろ“効いてますよ”とインジケーターで示してくれてもいい。そんな僕の感想に、ホンダの開発者は黙って苦笑いをしていた。その意味は何だろうか。
Honda S+Shiftという新しい感触

新型プレリュードのハイライトは、ホンダ車として初採用の「Honda S+Shift」。
モーター駆動でありながら仮想8段変速を持ち、加減速時に細かくエンジン回転をコントロールする。まるで有段変速機があるようなダイレクトなレスポンスと鋭いシフトフィールがある。
ハイブリッドで“変速の楽しさ”を再現する試みは他社にもあるが、“フィーリング”として積極的に演出してきた例は少ない。シフトタイミングと駆動力はきれいに連動し、スポーツドライビングのリズムが戻ってくる。
さらに、回転数に同期した音をスピーカーから流すアクティブサウンドコントロールも装備。“静かすぎるハイブリッド”ではなく、“走りの音が伴うハイブリッド”へ。
ここにもホンダの方向性が見える。
プレリュードを降りて、最後に残ったもの

新型プレリュードは、デートカー路線ではなく、スポーツクーペとして振り切ろうとしていた。歴代プレリュードが持っていた“新機構導入を取り入れる姿勢”はそのまま受け継ぎ、そこへ電動化時代の技術を重ねてきた。
「デートカー」の記憶も、「スポーツクーペ」の血筋も、全部ひっくるめて“プレリュード”という名前に収まっている。
昔より便利で、昔より速くて、でもどこか昔のまま。“いま、このクルマを市場に出してどれだけのインパクトがあるのか”。そこが興味深い。
その魅力が今の時代にどう映るのか。興味は尽きないのだ。
〇スペック
ホンダ プレリュード
●全長×全幅×全高:4,520mm×1,880mm×1,355mm
●ホイールベース:2,605mm
●車両重量:1,460kg
●エンジン:水冷直列4気筒DOHC
●排気量:1,993cc
●最高出力:104kW(141PS)/6,000rpm
●最大トルク:182N・m/4,500rpm
●駆動用モーター:交流同期電動機
●最高出力:135kW(184PS)/5,000-6,000rpm
●最大トルク:315N・m/0-2000rpm
●駆動用バッテリー:リチウムイオン
●トランスミッション:電気式無段変速
●使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
●タンク容量:40L
●サスペンション:前/マクファーソン
後/マルチリンク
●ブレーキ:前/ベンチレーテッドディスク 後/ディスク
●車両価格:617万9800円(税込)
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