「Webマガジンは向かない」と思っていた30年のキャリアを持つモータージャーナリストの発想を劇的に変えたある一言

2025.05.02

クルマを語るのに必要な経験と文字数とは?

最近のクルマレビュー記事、短すぎないか? たった3分で読める記事で、本当にそのクルマの本質が伝わるのか!?——そんな疑問を持っていたが、ある一言がすべてを変えてくれた。

そもそも僕の紙媒体での原稿は数ページにわたる長いものが多かった。スーパースポーツを限界まで攻め込み、その奥底にある本性を暴き出す「太田哲也の限界インプレッション」が真骨頂。プロのレーシングドライバーとして20代を過ごし、マツダ 787やフェラーリ F40 GTEのような本格的なレーシングマシンと向き合ってきた。

そんな経歴があって、こう言ってはなんだが市販車は「おもちゃ」感覚だった。これまで、数々のスーパースポーツや数億円のクラシックカー、超レアなマシンに乗る機会を得てきた。

もはや「試乗記王道スタイル」は不要な時代か

ところが以前にWebマガジンの原稿依頼を受けた際、「地下鉄2駅分くらいで読める記事を書いてください」と言われた。えっ、それってつまり、そんな短い文章でクルマの魅力をどうやって語れというのか。昨年の暮れにAuto Messe WebAMW編集長から執筆依頼を受けたときも、「Webの短いフォーマットで、自分のオリジナリティをどう出すか?」と悩んだ。

しかし編集長は、「太田さんがハンドルを握った瞬間に感じたことをそのまま書いてください。クルマの説明は、読者は検索するからいらないです。太田さんだけが書けるオリジナルの原稿が読みたいです」と言った。肩の力が抜けるような一言だった。

それまで僕は原稿を書くにあたって、まずクルマの歴史や立ち位置を説明し、それから本題に入るという「試乗記王道スタイル」にこだわっていた。しかし、前半の資料集めや数値の確認には時間がかかり、それが正直なところ面倒でもあった。そこをすっ飛ばしていいの? それなら話は早い、となった

ついにオレの時代が来たのかもしれない・・・

実際に書き始めてみると、「乗る→感じる→書く」それだけで記事が成立してしまう。これまでの面倒なプロセスを省いたおかげで、むしろ文章の密度が上がったようにさえ感じる。まるで料理の下ごしらえをすっ飛ばして、いきなりフライパンを振るシェフのような気分だ。結果的に、書くこと自体が楽しくなっていた。

「老兵は去るべし」なんて考えがよぎった時期もあったが、むしろ「Web時代にこそオレの出番」ではないか。ついに「オレの時代が来たー」。そんなことを思いながら、今はワクワクしている。

これからもどんどん書いていくので、ぜひ楽しみにしていてほしい。

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