EV戦国時代の衝撃!|BYD シーライオン7が国産勢を超える日?【太田哲也試乗】
2025.04.25
中国EVの現状に迫る。BYD シーライオン7に乗ったら…日本車が不安になった件。
電動クロスオーバーSUV、BYD シーライオン7に乗ってみて、正直、焦った。
想像以上に完成度が高く、このクオリティのBEVが500万円台で出てくるなら、日本の自動車メーカーは本当にマズいかもしれない。しかも、BYDはこのモデルで日本導入第4弾。いよいよ本気で攻めてきている。
スペックだけじゃない、走りの“気持ちよさ”
シーライオン7には、最高出力217PSの後輪駆動モデル(税込495万円)と、312PSのAWDモデル(税込572万円)がある。今回乗った後輪駆動モデルは、スペック的にはAWDに劣るはずだが、むしろ“気持ちよさ”という点ではこちらが上だった。
これまで「イメージとして数字に表れるスペック的なものは中国車も頑張っているけど、数値化できないものはまだ国産車に対して劣っている」と思っていたが、もはやそんなことはなかった。
シーライオン7はドアを開け閉めしたときに感じる工作精度の高さ、ステアリングを切ったときパワーステアリングのきめ細かい制御によるステアリングフィーリングのよさ(=制御の多さ)、優れたボディ剛性などを備えていた。きちんとテストしてセットアップしていることが伺える。
クロスオーバーSUVでも体感できる驚異の加速
安全な場所でドライブモードをハイパワーに設定し、アクセルを踏み込んだら、SUVとは思えないすさまじい勢いで加速する。超ド級スーパースポーツカー並みの加速を味わえるのでオーナーの満足感は高いはずだ。
AWDモデルよりパワーが少ない後輪駆動モデルでも圧倒的な速さを見せるから、これは見た目こそクロスオーバーSUVだが生粋のスポーツカーだともいえる。
どうやらボルボなんかもBEVでは後輪駆動が理想だと考えているらしいが、納得である。
高級感あるインテリアにも注目
インテリアも手抜きはない。ダイヤ型ステッチの施されたシートは昔ながらの高級表現。中国富裕層が喜びそうなデザインである。
その他、質感の高い素材、直感的に扱えるインターフェース。見た目の好みは分かれるかもしれないが、「高級」を強く意識していることが伝わってくる仕上がりだった。
バッテリー技術と生産スピードで突き放すBYD
BYDはバッテリーメーカーとしての出自を活かし、熱分解温度が高く発火リスクの低いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。
すでに「5分の充電で400km走行可能」という未来の技術にも手が届いている。これはもう、かつての“EVは非日常”という時代の終わりを告げるモデルかもしれない。
都市部での使用にはサイズが悩ましい
とはいえ、都内で乗るには全長4830mm/全幅1925mmというボディサイズはやや大きい。
僕の住むエリアでは、今乗っているジープ コンパスくらいがちょうどいい。だが、逆にこのサイズだからこそ、大容量バッテリーを積み、長距離ドライブの安心感が得られるというメリットもある。
BEVとPHEV、それぞれの現実的選択肢
BEVのエアコンはアイドリング不要で静かに長時間稼働できるので、車内ワークにも向いている。とはいえ、充電インフラや冬場の冷えを考えると、プラグインハイブリッド(PHEV)の方が実用的という考えも捨てがたい。
「これを選ぶかどうか」は、生活スタイルと環境次第だ。だが間違いないのは「BYDのBEVは、もはや侮れない」ということ。
これは確実に、日本のEV市場の転機になる1台だ。ちなみに、8秒に1台のペースで生産し30秒に1台が輸出されているというから、その生産流通スピードにも驚きだ。
BYD シーライオン7(RWD)
●全長×全幅×全高:4,830mm×1,925mm×1,620mm
●ホイールベース:2,930mm
●車両重量:2,230kg
●電動機(モーター):永久磁石同期モーター
●最高出力:230kW(312PS)
●最大トルク:380N・m
●駆動用バッテリー:リン酸鉄リチウムイオンバッテリー
●総電力量:82.56kWh
●サスペンション:前/ダブルウィッシュボーン 後/マルチリンク
●ブレーキ:前後/ベンチレーテッドディスク
車体価格 ¥4,950,000~
▽その他のEVモデルの記事もごいっしょにどうぞ。
・BYD シールAWD/テスラ モデル3パフォーマンス/ヒョンデ アイオニック 5 N、次世代EVスポーツカー3台を比較試乗! “走る喜び”をEVでも体験できる時代が到来か!?
・BYD シール:EVの常識を覆すスポーツセダン
・EV一辺倒でなく、いろいろあって、それでイイ!新型マツダCX60試乗 (後編)
・EV一辺倒でなく、いろいろあって、それでイイ!新型マツダCX60試