フェラーリ456GTAはATでもスポーティか? 4シーターV12の実力をボローニャで徹底検証 Part1

  • 太田哲也
2025.12.07

FERRARI 456GTA

かつて「日本一のフェラーリ遣い」と呼ばれた太田哲也が、1993年から1997年にかけて試乗した数々の貴重な跳ね馬のインプレッションを、当時の興奮をそのままにお届けします。
今回は、オートマティック・トランスミッションを採用し、スポーティでありながらラグジュアリーさも兼ね備えた456GTAを、太田哲也がボローニャで現地試乗したレポート、その前半をお届けします。

V12とA/Tの絶妙な組み合わせ

ミラノから南東へ210km、イタリア北部エミリア・ロマーニャ州の州都であるボローニャは、旧い歴史を誇る都市である。街には教会や城壁、王侯貴族の邸宅などの中世の建造物がそのままの姿で並び、近代的な様相を呈したビルはほとんどない。まるで中世の欧州にタイムスリップしてしまったかのようだ。こうした建造物のほとんどは観光用に利用されているのではなく、外見とは対照的に現代的な内装に改修され、店舗やミュージアム、庁舎などとして利用されている。フェラーリが、4シーターFRモデル、456GTにオートマティック・トランスミッション(A/T)を搭載したニューモデル、456GTA発表の会場に選んだのは、この街の中心部にあるガルバーニ広場であった。建物の前庭には、黒メタ、紺メタ、銀の4台のフェラーリ456GTAがたたずんでいて、古い街並みと近代的なクルマが不思議なくらい融合していた。

今回のプレス発表の場となったのは世界最古の大学といわれるアーチギニャージオだが、その講義室にはフェラーリV12と長いプロペラシャフトで接続されたトランス・アクスルに組み込まれたA/Tが展示されていた。改めて見るとフェラーリ製V12エンジンの美しいエグゾーストの取り回しと、エンジンと同じほどマスのあるA/Tの巨大さに目が奪われる。

ブリーフィングの後、広場に戻ると456GTAの周りは人だかりができている。イタリアでもフェラーリの人気は絶大だ。なんだか照れくさかったが、ドアを開け、タンのレザー・シートに身体を滑り込ませた。ドライバーズ・シートが電動で前後スライド/バックレストが無段階で調整できることに加えて、ステアリングにチルト/テレスコピック機構を持つため、フェラーリ特有だった手が遠いドライビング・ポジションは影を潜め、日本人にも快適な姿勢を取ることができる。ペダル・レイアウトも最適で、特にブレーキ・ペダルの位置が丁度良く、右足ブレーキはもちろん、A/T車だと気になる左足ブレーキもおこないやすい位置に配置されている。

エアバッグはステアリングだけでなくパッセンジャー側にも装着されていて、この点からもフェラーリが変わりつつあることを感じる。ステアリングから右手を下ろした丁度良い位置にA/Tのセレクター・レバーが伸びていて、アルミ削り出しの球状のノブが手のひらにひんやりとした感触を伴う。マニュアル・トランスミッション(M/T)のフェラーリと同じ位置、同じ感触だ。違っているのは、セレクト・レバーの頭にロック解除用のプッシュ・ボタンが組み込まれていることで、セレクター・レバーを握りながら、親指でこのボタンを押してシフトを操作する。見た目には少々違和感を感じるが、慣れてしまえば気にならなくなるだろう。操作性は良好だ。

当然ながら、フェラーリ独特のあのゲートが刻まれたM/Tゲートではなく、A/Tのシフト・スロットが縦一列に並んでいるのだが、そこはさすがフェラーリで、A/Tのゲート・プレートはキャバリーノ・ランバンテの刻印の入った美しいアルミ製で作られ、フェラーリらしい瀟洒な雰囲気を漂わせる。

A/Tにエンジン・マネージメントと連動した電子制御システムを採用したことで、Dレンジに放り込んでおけば、常に最適なギアの選択をしてくれるからイージー・ドライブを決め込むことができる。

マニュアルでシフトする場合は通常のA/Tと同じで、シフト・アップ時にはフリーで、シフト・ダウン時のみボタンを押して操作する。

またエンジンの始動は、PレンジあるいはNレンジでブレーキを踏みこむ操作によりおこなう点など、通常のオートマ車と同様である。

ロック・ボタンを押しながらDレンジに入れてスタートする。Dレンジからの発進時に気付いた事は、トルク・コンバーターのスリップが大きく、さながらCVTのように速度が上がっていないのにエンジンの回転が上がることだ。最初は違和感を感じたが、その反面、エンジン回転が上がるので、A/T車にありがちな動き出しのダルな感じはない。CVTとは違って、速度が上がるにつれスリップが減り、4速、60km/hでロックアップする。

レブ・カウンターは7000rpmからレッドゾーンが始まり、1万rpmまで表示され、スピードメーターは320km/hまで表示されている。

アルファ・ロメオなどの一部の欧州車に採用されているZFのA/Tは、市街地速度であっても速度の低下に応じてこまめにシフトダウンするプログラミングとなっており、試乗前は456GTAもきっとそうだろうと思っていたのだが、実際は、通常のA/Tのようなプログラミングであった。確かにZFタイプはエンジンブレーキが良く効くし、コーナーの出口ですぐに加速態勢に入ることができるという長所がある反面、市街地走行では信号などで止まる際、シフトダウンがうるさく感じることもある。456GTAはパワーもありキックダウンも敏感なため、出口でスロットルを開ければ瞬時にシフトダウンし、すぐに加速態勢に移れるからアルファのようなキャラクターを与えられなかったのだろう。さらにもっとリズミカルに走りたいときは、自分でセレクターレバーを操作してくれ、というA/Tなのである。

実際に、市街南東のワインディング・ロードに足を踏み入れると、Dレンジではコーナーの進入でエンジンブレーキが不足する感があるが、そういう時は積極的にシフト・ダウンして走るのが、A/T車と言えども跳ね馬の正しいスポーツ・ドライビングというものだろう。

短い直線をアクセル全開で下り、コーナーにアプローチする。ブレーキング。ノーズが沈み込む。セレクター・レバーを握り親指でボタンを押しDレンジから3速、2速へとシフトダウン。エンジンブレーキが効いて今度は4輪が沈み込む。カチ、カチ、カチと小気味良く決まるシフトダウンが気持ち良い。もちろんフェラーリF1のセミ・オートマ並みとまではいかないが、変速スピードが速く、ショックも少ないため、必要なだけエンジンブレーキが使えるし、ブレーキングも安定する。このA/Tは相当スポーティで楽しい事が分かってくる。

(後半に続く)

▽フェラーリ456GTAインプレッションの後半はこちら
ミッドシップより快適なハンドリングとV12サウンドの魅力! フェラーリ456GTAを検証 Part2