ミッドシップより快適なハンドリングとV12サウンドの魅力! フェラーリ456GTAを検証 Part2

  • 太田哲也
2025.12.14

FERRARI 456GTA

かつて「日本一のフェラーリ遣い」と呼ばれた太田哲也が、1993年から1997年にかけて試乗した数々の貴重な跳ね馬のインプレッションを、当時の興奮をそのままにお届けします。
今回は、オートマティック・トランスミッションを採用し、スポーティでありながらラグジュアリーさも兼ね備えた456GTAを、太田哲也がボローニャで現地試乗したレポート、その後半をお届けします。

456GTAの開発責任者のジョルジューニ氏によれば、クイックなシフトを実現できた要因は、エンジンのレスポンスがとても優れていることに加えて、コンバーターの容量を上げ、スリップを多めに取ったことにもあるそうだ(通常よりも25%程度スリップ率を上げている)。これにより変速ショックも減り、スムーズさも身につけているのだ。

ところで、ガードレールもなく狭い簡易舗装のワインディングで456GTAのステアリングを握って改めて思ったのだが、他のミッドシップ・フェラーリ(特に12気筒モデル)を駆るよりも、ずっと運転が楽なことだ。ボディの見切りが良いことに加えて、やはりFRレイアウトだからだろう。ミッドシップのように荷重移動に集中しなくても、ステアリングを切れば楽に回頭するし、テールが滑った時のカウンター・ステアもミッドシップ・モデルよりも簡単だ。コーナリングの絶対速度はともかくとして、コントロールの幅が広く扱いやすい。

またボローニャの市街地の狭く混雑した中でも456GTAはいきいきと流れをリードして快適だった。日本の路上でも、きっと相当に魅力的なモデルであるだろう。

456GTAのチューニング

A/T化に際しては大型のトルク・コンバーターやオイルポンプが装着されたことと、リアのクーリング・ファンなどのクーリング・システムの追加により、M/T車よりも約80kgほど重量が増加し、前後配分もM/Tの51:49から49:51に変わったことに対応して、スプリングとダンパーが強化され、さらにブレーキの容量をアップするなど細かいチューニングも施されているが、変更点はあくまでもM/T車と同様なハンドリングと乗り心地を実現するためのものである。乗り心地に関しては、足が固められたからといって乗り心地が悪化しているわけではなく、実際に荒れた石畳路面でも、ダンパーの切り替えスイッチにS(ソフト)レンジを選べば、ゴツゴツ感はほとんどなく、フロント255/45ZR17、リア285/40ZR17サイズのワイドなタイヤを履いていることを忘れてしまうほど快適だ。

ちなみにダンパーはM/T車と同様、S-M-Hの3段マニュアル切り替えだが、市街地や高速道路ではS、ワインディングでもMで十分で、Hだと路面がサーキットのようによほどフラットでない限りぽんぽんと跳ねてしまい、特にGTAではほとんど使う必要はないだろう。

シートは表面が柔らかく快適でありながら適度に腰があり、ワインディングでのサポート性も良く、疲れない。ステアリングはパワーアシスト付きだからキックバックが少なく、石畳の路面でもステアリングが叩かれることなくしっとりしていて高級感が感じられる一方で、路面のインフォメーションは適度に伝わってきて運転が楽しめる。

街を抜けアウトストラーダに入り、合流車線をDレンジで全力加速する。リミットの7000rpmまで回すと1速で82km/h。2速で145km/h。3速5000rpmで175km/h。4速2500rpm=130km/h、3500rpm=184km/hとハイギアードなので高速クルーズは得意科目だ。それでいてA/Tとは信じ難いほどの強烈な加速も見せる。メーター公表値で0-100km/h加速はM/Tが5.2秒、A/Tが5.5秒、以下それぞれ0-400mが13.3秒、13.6秒、0-1000mが23.3秒、23.7秒という驚くべき速さを誇るのだ。

5473cc水冷V型12気筒440PS/6200rpm、56kg-m/4500rpmを発揮するF116はM/T車と同じスペックである。M/T車が6段トランスミッションを有するのに対し、A/Tが4段であることを考えると、驚異的な速さだ。ここでも例のコンバーターのスリップがエンジンの回転上昇に有効に働いている。

今回、短い試乗時間のなかで正確な燃費は計れなかったが、市街地とワインディング、そして高速道路での使用でおそらく5km/リッターを切っていただろう。まぁ456GTAのオーナーにとっては燃費はそれほど気に掛かることでもないかも知れない。

とろけるようなフェラーリV12サウンド。スロットルペダルを通し伝わってくる、フェラーリV12が咆哮する際の生き物のような鼓動。ゆっくり走ってもわくわくするような気持ち良さがある。456GTAを手に入れればこの快感を手にすることができるのだ。A/Tであってもフェラーリならではの魅力が失われていないことを知って、12時間も飛行機に押し込まれてボローニャまで来た甲斐があったと思った。

▽フェラーリ456GTAインプレッションの前半はこちら
フェラーリ456GTAはATでもスポーティか? 4シーターV12の実力をボローニャで徹底検証 Part1