クルマ好きのお坊さんの形見として

BMW 2002ターボを購入することにした。これは、1980年代初頭、僕がレースを始めた頃にお世話になっていたクルマ好きのお坊さんが所有していたクルマで、彼の遺品・形見として、メンテナンスを担当していたショップを通じて引き継ぐことになった。
シルバーのボディをまとったこのBMW 2002ターボは、正規輸入元バルコムによるディーラー車で、当時の車検証入れもそのまま付属している。当時日本ではオーバーフェンダーが認可されておらず、ディーラー車はパテ埋めされている仕様だ。
クラシックBMWファンならずとも惹かれる、時代と物語を背負った一台。まさに「ストーリーで乗る名車」である。
初試乗で感じた驚き

事前に試乗させてもらった。
クーゲルフィッシャー製・機械式フューエルインジェクションは神経質な印象があったが、実際にはまったくそんなことはなかった。クラッチ操作もスムーズで、エンジンも低回転でのバラつきはなく、いたって普通に運転できた。
ブレーキはオーバーホール済みで、全体的にも快調そのもの。とはいえパワーステアリング非装着車ゆえ、駐停車時にはステアリングはやはり重いが、走り出してみれば、その手ごたえ感がまた良い。昔のクルマらしさがそこにあった。
“クラシック=気難しい”という先入観を見事に覆す素直なフィーリングに驚かされた。
世界初の量産ターボの真価

1973年に登場したBMW 2002ターボは、量産車として世界で初めてターボチャージャーを搭載したモデルだ。最高出力170PS/5800rpm、最大トルク24.5kgm/4000rpmという数値をコンパクトな2ドアセダンに詰め込んだ、まさに“羊の皮をかぶった狼”。
現代のターボ車は低回転からトルクが湧き出るが、この2002ターボは違う。4000rpm以下ではギクシャクもせず、普通のNAエンジンのようにスムーズ。しかし4000rpmを超えてから「シューッ」とターボがいきなり効き始める。その唐突さが逆に楽しい。
かつて僕が乗っていたトヨタ セリカのターボ(セリカ 1800GT-T/1981年登場の三代目)は、低回転域がスカスカで運転しづらかったが、それとは真逆。2002ターボのエンジンは低回転では普通のNA、そして中高回転ではターボが効いてくる。エンジンのフィーリングも「羊の皮をかぶった狼」そのものだった。
お坊さんがこのクルマで檀家を訪れていた理由が、今になってよくわかる。運転しやすく、それでいてその気になってアクセルを踏み込めば、ジキルとハイドのように豹変する。見事なバランスだ。
控えめな装いの中に宿る個性

本来、BMW 2002ターボといえば、白地にトリコロールのレーシングストライプ、そして逆文字で書かれた「turbo」ステッカーがフロントスポイラーに貼られているのが特徴である。バックミラー越しにその文字が映れば、「ただ者じゃない」と思わせ“道を開けろ”のメッセージにもなる。
しかし今回引き継ぐ個体には、そうした派手な装飾は一切ない。お坊さんが檀家を訪ねる際に乗っていたため、目立つストライプを避けたのだという。見た目は控えめで、そこもまさしく「羊の皮をかぶった狼」だ。
都内のちょっとしたドライブでも、エアコンがない以外は通勤にも使えそうなくらい乗りやすい。ただし、夏はエアコンなしでは厳しい。試乗は7月だったが、電動ファンが装着されているため水温は上がらなかった。
控えめな外観と猛獣のような中身──このギャップこそ、クラシックBMWの真髄なのかもしれない。
最後に──このクルマと共に生きる未来へ

SNSで話題となるような派手さはないかもしれない。でも、確かにここには時代を超えた個性と物語がある。
もしBMW 2002ターボに興味がある方、あるいは「クラシックカーのある暮らし」を考えている方がいたら、ぜひKEEP ON RACINGのYouTubeチャンネルやInstagramもチェックしてみてほしい。
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