第4回:海の向こうの“声”を聴け 〜BYDシーライオン、ユーザーとメディアはこう評価した〜

2025.04.29

■ はじめに

どれだけスペックが優れていようとも、実際の評価は「ユーザーの手に渡ってから」が本番である。第4回では、BYDシーライオンがすでに市場投入された地域(特に中国・欧州)でのオーナー評価、試乗レビュー、メディアの論調など、リアルな反応を読み解いていく。


■ 中国国内での初期オーナーの反応

BYDの本拠地・中国での反応はやはり鮮烈だ。SNSや自動車掲示板には、納車されたユーザーからの生の声が続々と寄せられている。

好評点

  • 静粛性と乗り心地の高さ

     「これまでに乗った中で最も静かなSUV。遮音性はレクサスRXと同等」との声も。

  • 加速性能と走行安定性

     「都市部の高速合流でもまったくストレスなし」「重心が低くロールが少ない」とのコメント。

  • 内装の質感・装備の充実度

     「この価格帯でここまでの内装?」「センターディスプレイが回転するのが地味に便利」など、DiLink OSも高評価。

一部指摘された点

  • ドライバーズカーとしての味付けの薄さ

     「スポーティというより快適重視」「もう少しステアフィールが欲しい」との声も。

  • アプリのUIやローカライズ不足(一部市場向け)


■ 欧州メディアの試乗レビュー:懐疑から賞賛へ

ドイツ、フランス、ノルウェーなど欧州市場でも試乗イベントが実施され、現地メディアによるレビューが公開された。

英・AutoCarの評価(2024年3月)

「BYDシーライオンは驚くほどバランスの取れたEV SUVである。特に走行中の快適性とブレーキ制御は欧州ブランドにも引けを取らない。」

独・Auto Motor und Sport誌

「パワーもデザインも申し分なし。唯一の課題はブランドバリューだが、それも時間の問題だろう。」

ノルウェーEVフォーラム(ユーザー投票)

2024年上半期の「Most Promising EV」部門で2位にランクイン(1位はModel 3 Highland)


■ 実際の納車・販売状況

中国国内では予約開始から1ヶ月で3万件を突破。欧州でも初期割当分は早々に完売し、追加オーダー分の納車は6ヶ月待ちという地域もある。特に以下のような層が購入している:

  • テスラModel Yからの乗り換えユーザー

  • 初EVユーザーだが高級感にこだわる層

  • 「中国製でもいい、むしろBYDだから選ぶ」という層(特に中国では)


■ YouTubeやSNSでも注目

英語圏の自動車インフルエンサーもこぞってレビュー動画を投稿。

  • “Fully Charged Show”:EVプラットフォームの完成度に驚き

  • “Out of Spec Reviews”:後席の広さと静粛性に言及

  • 中国Weibo・抖音(TikTok)では、車内の照明演出や音声AIとのやりとり動画がバズ中


■ 総括:シーライオンは“乗ればわかる”クルマだった

メディアの論調は当初こそ「BYD=安いけど品質は…?」という懐疑的なトーンだったが、試乗後は一転して評価が高まっている。オーナーの声も、走り・装備・質感といった点で好評が目立ち、実際に乗った人ほど「想像以上だった」と口にしている

つまり、シーライオンは“スペックを読むより、ハンドルを握れ”と言わんばかりの完成度を備えたSUVだということだ。


次回の第5回では、今後の展開とシーライオンのもたらす影響について。BYDというブランドの今後、そして電動SUV市場全体に与えるインパクトを展望する。

 


連載目次

第1回:BYDシーライオン誕生

〜SUV市場を揺るがす“電動の海獣”〜

EVとSUVの交差点で生まれた新シリーズ「海洋ファミリー」。シーライオンが誕生した背景と、そこに込められたBYDの狙いとは?


第2回:テクノロジーで泳ぎ切れ

〜eプラットフォーム3.0とブレードバッテリーの真価〜

専用EVアーキテクチャと最新の電池技術がもたらす、快適性・安全性・パフォーマンスの全貌を解説。


第3回:世界を泳ぐ

〜欧州・アジア・北米への布石と市場戦略〜

シーライオンが挑むのはテスラでもトヨタでもない。“グローバルSUV市場”という大海だった。その戦略と地域別展開を追う。


第4回:海の向こうの“声”を聴け

〜オーナーとメディアが語る実力〜

実際に乗った人はどう感じたのか? 中国・欧州を中心に寄せられたユーザーレビューと試乗記から、評価のリアルを読み解く。


第5回:シーライオンの波紋

〜BYDの次なる野望とEV市場の行方〜

このSUVが業界にもたらすインパクトとは? ポスト・テスラ時代の鍵を握るのは、中国発のこの“海獣”かもしれない。