第2回:テクノロジーで泳ぎ切れ ― BYDシーライオンに搭載されたBYDの最新技術

2025.04.29

画像引用:BYD 公式サイトより

■ はじめに

BYD シーライオンが注目される理由は、見た目の美しさだけではない。むしろ、そこに詰め込まれた先進技術こそが、このモデルを「次世代SUV」と呼ぶにふさわしいものにしている。

今回は、シーライオンに搭載されたプラットフォーム、駆動方式、インテリジェント機能、そしてBYD独自の電池技術などを中心に、その“中身”を解き明かしていこう。


■ eプラットフォーム3.0:EV専用設計の新境地

シーライオンには、BYDが誇る「e-Platform 3.0」が採用されている。これは、EV専用にゼロから設計された次世代アーキテクチャであり、以下の特徴を持つ:

  • インテグレーテッド・ドライブトレイン(8-in-1)

  • ブレードバッテリー完全統合型構造

  • 短いフロントオーバーハング&長いホイールベース

  • 低重心・高剛性のアルミ構造

この構造により、前後重量配分の最適化、コーナリング安定性、そして乗り心地が大きく向上。さらに、電動車らしい静粛性とパワーデリバリーの滑らかさを実現している。


■ ブレードバッテリー:安全性とエネルギー密度の両立

BYDが世界に誇るもうひとつの技術が「ブレードバッテリー」である。

このバッテリーはリン酸鉄リチウム(LFP)をベースとしながらも、独自のセル形状と構造により、以下の点で優れている:

  • 高いエネルギー密度と長寿命

  • 穿刺試験にも耐える安全性(=発火リスクの大幅低減)

  • 優れた熱管理性能(熱暴走リスクの最小化)

シーライオンにはこのブレードバッテリーが床下一体構造で配置されており、キャビン空間の拡張と低重心化の両立が図られている。


■ AWD(デュアルモーター)+インバーター制御

上位グレードではデュアルモーターAWD仕様となっており、前後に高出力モーターを搭載。0-100km/h加速は4秒台前半とされており、スポーツSUV顔負けのパフォーマンスを実現している。

さらに注目すべきは、自社開発のシリコンカーバイド(SiC)インバーターの採用。これにより、電力変換効率が飛躍的に向上し、より多くのエネルギーを走行に活用可能となっている。


■ インテリジェント・キャビンとスマートコックピット

シーライオンのインテリアも極めて先進的だ。特に以下のような機能が搭載されている:

  • 15.6インチ回転式センターディスプレイ(DiLink OS)

  • フルデジタルメーター+AR HUD

  • 音声AIアシスタント「Xiaodi(小迪)」

  • OTAアップデートによる常時進化型ソフトウェア

また、自動運転支援機能(L2+)として、アダプティブクルーズ、車線維持、360°ビューカメラなどが標準化。今後はL3相当の自動運転にも対応予定とされている。


■ 総括:シーライオンは“中身”も本物だった

第2回では、BYDシーライオンに搭載されたテクノロジーの数々を見てきたが、いずれもEV専業メーカーならではの緻密さと野心が感じられる内容だった。

この車が持つパフォーマンス、快適性、安全性、すべてが世界基準に達している。いや、それどころか、テスラやBMW、ヒュンダイといった強豪ブランドを凌ぐ可能性さえある。

次回は、いよいよ「グローバル戦略と市場投入」について。なぜBYDはこのモデルを今、世界に出すのか。その狙いと戦略を深掘りしていく。


連載目次

第1回:BYDシーライオン誕生

〜SUV市場を揺るがす“電動の海獣”〜

EVとSUVの交差点で生まれた新シリーズ「海洋ファミリー」。シーライオンが誕生した背景と、そこに込められたBYDの狙いとは?


第2回:テクノロジーで泳ぎ切れ

〜eプラットフォーム3.0とブレードバッテリーの真価〜

専用EVアーキテクチャと最新の電池技術がもたらす、快適性・安全性・パフォーマンスの全貌を解説。


第3回:世界を泳ぐ

〜欧州・アジア・北米への布石と市場戦略〜

シーライオンが挑むのはテスラでもトヨタでもない。“グローバルSUV市場”という大海だった。その戦略と地域別展開を追う。


第4回:海の向こうの“声”を聴け

〜オーナーとメディアが語る実力〜

実際に乗った人はどう感じたのか? 中国・欧州を中心に寄せられたユーザーレビューと試乗記から、評価のリアルを読み解く。


第5回:シーライオンの波紋

〜BYDの次なる野望とEV市場の行方〜

このSUVが業界にもたらすインパクトとは? ポスト・テスラ時代の鍵を握るのは、中国発のこの“海獣”かもしれない。