BYD シールAWD/テスラ モデル3パフォーマンス/ヒョンデ アイオニック 5 N、次世代EVスポーツカー3台を比較試乗! “走る喜び”をEVでも体験できる時代が到来か!?
2025.03.07
EVスポーツカーの出現で考えが変わった
つい最近まで、僕はEVに興味がなかった。CO2削減は大事だが、EVに関してそのこと自体にも疑問があるし、使い勝手を含めて、愛車にする気持ちはなかった。しかし、新たな価値観を提示するEVスポーツカー3台が登場し、考えが変わった。
今回のJAIA輸入車試乗会では、テスラ Model 3パフォーマンス、BYD シールAWD、ヒョンデ アイオニック5 NのハイパフォーマンスEVスポーツを同時に比較試乗し、そのポテンシャルを体感した。いずれも公道向けの車だが、そのパフォーマンスは「サーキットを走らなければもったいない」と感じさせられる。
もちろんスポーツカーの魅力は速さだけではないが、間違いなく速さは楽しさの大きな要素だと改めて思った。ガソリン車の高出力モデルが高騰し、スーパースポーツを手に入れるのはもう無理だと思っていたが、EVスポーツであればその半分、いや1/3程度だ。スーパースポーツのスペックと比較しても遜色ない(むしろパワー的には上回る)動力性能を数百万円で手に入れられるのだ。
BYD シールAWD:テスラを徹底研究した挑戦者(模倣者?)
最初に試乗したのはBYD シールAWD。車内に乗り込んだ瞬間、レザーシートのフィット感と高級感に驚いた。特にサイドミラー内蔵カメラの映像がインパネに表示される機能は、自転車の巻き込み防止など都市部の走行でも安心感がある。
システム最高出力529PSのパワーは公道では十分すぎてやば過ぎて、試す機会はないが、サーキットでは楽しいだろうなと思わせられる。ただしテスラ Model 3パフォーマンスやヒョンデ アイオニック5 Nと競うためには、さらなるスポーツ志向のバージョンを期待する。
テスラ Model 3パフォーマンス:電気屋の底力と変なユーモア感覚
次に乗り込んだのはテスラ Model 3パフォーマンス。ステアリングを握り、システムを最強モードに設定、アクセルを踏んだ瞬間、後ろから大男に蹴飛ばされたような凄まじい加速、体がシートにめり込む。それでいて公道では快適な乗り心地を維持している。特に路面の微細な段差を感知して瞬時にサスペンションを調整するシステムは、20インチタイヤでも驚くほど滑らかだ。
さらに、ドリフトモードは従来の常識では味わえない独特の挙動を体感できる。サーキットでは比較的軽量な車体がコーナリングでの優位性を発揮し、650PSのヒョンデ アイオニック5 Nと好勝負を繰り広げるだろう。
またイーロン・マスク氏らしい「変な」ユーモアを連想させられる“おならブーブーモード”もある。指定した座席にブーと言う音を出す仕組みだ。こんなものは、今までのクルマ好きには思いつかないシロモノだ。
ヒョンデ アイオニック 5 N:多才なオールラウンダーだけど先鋭的なスポーツ志向
最後に試乗したのはヒョンデ アイオニック5 N。アクセルを踏み込むと、バックファイア音を模したサウンドがキャビンに響き、EVとは思えない高揚感を味わえる。街中でも快適な乗り心地を提供しつつも、N Grin Boostというステアリング上の赤いボタンを押せば、10秒間だけ650PSを炸裂させる。
圧倒的なパワーだが、テスラModel 3と比べると、SUVスタイルによる高い車高と高重量がコーナリングでの課題となり、テスラといい勝負となるだろう。開発者たちがまるでレース屋のノリで、楽しんで造ったことが伝わってくる一台、ドライバーをワクワクさせる工夫が随所に感じられた。
速さと楽しさはパワーソースを超えて
かつて自動車専門誌ではスポーツモデルの筑波サーキット・ラップタイム競争が人気だったが、今ではその文化も薄れつつある。しかし、これらEVスポーツカーの登場によって、新たなタイムアタック競争が再び盛り上がるかもしれない。実際、知人のフェラーリオーナーも発売と同時にヒョンデ アイオニック5 Nを購入したという。
ブランドやパワーソースにこだわらず、“速くて面白いクルマ”を求める人がどれだけいるかが、EVスポーツの未来を決定づけるだろう。“走る喜び”をEVでも体験できる時代が、いよいよ本格的に始まった。
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