アルファロメオ・ジュリアの軌跡【第2回】アルファロメオ・ジュリア ― クアドリフォリオの衝撃と、フェラーリの血統

2025.04.10

~ドイツ御三家への宣戦布告~

2015年6月24日――ミラノでの衝撃的デビュー

アルファロメオはブランド創立105周年となる2015年6月24日、ミラノで新型「ジュリア(Giulia)」を世界初公開した。しかも、その初披露となったのはハイパフォーマンスモデル「クアドリフォリオ(Quadrifoglio)」

この戦略的な演出は、単なる新型セダンの発表ではなく、アルファロメオが再び“走り”で勝負を挑むブランドであることを世界に高らかに宣言するものであった。

クアドリフォリオ=四つ葉のクローバーが意味するもの

“クアドリフォリオ”は、アルファロメオのモータースポーツの象徴であり、1923年のレーシングモデルに端を発する伝統のエンブレムである。
それを冠することは、単なるグレードの違いではなく、ブランドの魂と競技志向を体現した存在であることを意味する。

そして今回のジュリア・クアドリフォリオは、名ばかりの象徴ではなかった。
中身は完全に、スーパースポーツクラスの水準に達していたのだ。

フェラーリ由来の2.9L V6ツインターボエンジン

最大の話題はその心臓部にあった。
新たに搭載された2.9リッターV6ツインターボエンジンは、フェラーリの技術陣によって開発された完全新設計のユニットであり、その最高出力は510ps(375kW)/最大トルク600Nm

このスペックは、同時期のBMW M3(F80)、メルセデスAMG C63を凌駕し、クラス最強とも称された。
0-100km/h加速はわずか3.9秒という驚異的なタイムを叩き出す。

このエンジンには、以下のような特長がある:

  • フェラーリV8(F154系)と共通思想のシリンダーブロック設計
  • 繊細なスロットルレスポンスと官能的なエキゾーストノート
  • ドライブモード「DNA Pro」による特性変化

軽量化と空力制御の最前線

パフォーマンスを支えるのは、単にパワーだけではない。

ジュリア・クアドリフォリオには、軽量素材が惜しみなく投入された:

  • カーボンファイバー製ボンネット、ルーフ、プロペラシャフト
  • アルミ製サスペンションアーム、ドア、フェンダー

さらに注目すべきは、**可変アクティブ・フロントスプリッター(エアロパーツ)**の採用。これはセグメント初となる革新的な機構であり、高速走行時のフロントダウンフォースを能動的に増加させることで、優れた高速安定性とコーナリング性能を両立している。

ジャーナリストを唸らせた“走りの本気度”

発表後、欧州・北米の主要自動車メディアはこぞって試乗レビューを掲載。
その中でも共通して高く評価されたのは以下の点である:

  • ステアリングレスポンスの俊敏さ(クラス最短レシオ)
  • シャシー剛性の高さとリアのトラクション性能
  • ESP解除時でも破綻しない高次元のドライバビリティ
  • AMGやMでは味わえない、イタリア車特有の「情熱と躍動」

つまり、ジュリア・クアドリフォリオは単なるカタログスペックモンスターではなく、ドライバーの五感を刺激する本物のドライバーズカーとして登場したのだ。

次回予告

次回は、ベースモデル「スーパー」や「ヴェローチェ」、さらにマイナーチェンジによる技術的アップデート、そしてFCAグループでの立ち位置などを解説します。

【第3回:ジュリアの進化とラインナップ拡充 ― プレミアムFRセダンとしての確立】