アルファロメオ・ジュリアの軌跡【第1回】アルファロメオ・ジュリア ― 栄光の再誕とその舞台裏
2025.04.10
~ジョルジオプラットフォームに込められた覚悟~
アルファロメオの宿命と「ジュリア」という名の復活
イタリアの名門ブランド「アルファロメオ」が、2015年に新型「ジュリア(Giulia)」を発表したとき、自動車業界は息を飲んだ。かつての名車「105系ジュリア」に象徴される、FRスポーツセダンの伝統を継ぐモデルとして、ブランド再興の中核を担う存在となったのである。
この復活劇の裏には、単なるモデルチェンジを超えた大規模な再設計とブランド哲学の再構築があった。
フィアットグループの統合と“ゼロベース開発”の決断
2000年代後半、アルファロメオは前輪駆動ベースの車種(159、ブレラ等)で独自性を失い、欧州プレミアム市場での存在感は薄れていた。BMW 3シリーズやメルセデスCクラスとの直接対決において、技術的にもマーケティング的にも後れを取っていたのだ。
この状況を打破すべく、**フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)**は、アルファロメオブランドの大改革に着手。キーワードは「ゼロベースからの後輪駆動車の開発」である。
この方針のもと、2013年にマセラティの開発責任者フィリッポ・ペルニャが中心となり、新しいアーキテクチャが密かに設計され始めた。 それが、後に「ジョルジオ(Giorgio)プラットフォーム」として結実することになる。
ジョルジオプラットフォームの誕生
「ジョルジオ」は単なる新型シャシーではない。BMWに真っ向から挑むためにピュアFRレイアウトにこだわった、パフォーマンス重視のエンジニアリング哲学の結晶である。
- フロントミッドシップに近いエンジン搭載位置
- 50:50の重量配分
- ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンション
- 軽量素材(アルミ・カーボン)を多用したボディ構造
これらは、単にスペック上の数値ではなく、「ドライバーズカーとしての魂」を吹き込むための設計思想だ。**FRスポーツセダンとしての理想を追求した“真の再出発”**がここにあった。
“ジュリア”という名前に託されたメッセージ
「ジュリア」という車名は、1962年に誕生した初代モデルへの敬意であり、ブランドのルーツを未来へつなぐメッセージでもある。単なるノスタルジーではなく、過去の栄光を再び現代に蘇らせるという、アルファロメオの強い意志が込められている。
それは、単に走る楽しさを追い求めることだけではなく、「技術と情熱の融合」をブランドの柱として再定義する試みでもあった。
次回予告
次回は、いよいよ2015年の正式発表からクアドリフォリオの衝撃デビュー、そしてジュリアが世界市場に与えた影響を深掘りしていきます。
【第2回:2015年、ジュリア クアドリフォリオの衝撃。フェラーリ由来エンジンとドイツ勢への挑戦】
お楽しみに!
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