■ はじめに
中国EV最大手、BYD(比亜迪)の新たな挑戦。それが「Sea Lion(シーライオン)」というSUVモデルである。2023年末の発表以来、その洗練されたデザインと先進技術の融合に注目が集まっているが、シーライオンは単なる新型EVではない。その背後には、BYDがグローバルSUV市場に本格参入するという、戦略的な意味合いがある。
今回は、そんなシーライオンの誕生背景と開発思想を掘り下げていこう。
■ シーライオンとは何者か?
シーライオン(海獅)は、BYDの「海洋シリーズ」のひとつとして位置づけられている。セダン系の「ドルフィン」や「シール(海豹)」に続き、SUVカテゴリーに投入された初のフラッグシップモデルである。
そのネーミングからも分かるように、「海」にちなんだシリーズ名で統一しながら、それぞれの動物が象徴する特性をデザインや性能に反映している。シーライオンはその名の通り、優雅さと力強さを併せ持つ存在として企画された。
■ 開発の背景:グローバルSUV市場の本気戦略
BYDがシーライオンに懸ける思いは並々ならぬものがある。2020年代に入り、世界の自動車市場はSUVとEVという2つの潮流が交差しはじめた。その中で、BYDは「ハン(漢)」「タン(唐)」といった高性能モデルを中国国内向けに展開してきたが、よりグローバル志向の製品を求められる局面が訪れた。
そこで生まれたのが、「海洋シリーズ」から派生したシーライオンである。開発にはドイツ、イタリア、日本など、海外の技術者やデザインチームも関与しており、車両設計も従来より欧州市場・北米市場への適合性を重視した仕上がりとなっている。
■ デザインコンセプト:空力と未来感の融合
シーライオンのデザインは、BYD内製のデザインセンターである「BYDデザイン・グローバルネットワーク」が主導。元アウディのチーフデザイナー、ヴォルフガング・エッガー氏の指揮のもと、流麗でエッジの効いたスタイリングが完成した。
特徴的なのは、SUVらしいボリューム感を持ちつつも、クーペのようなルーフラインと滑らかなボディサーフェスを組み合わせており、空力性能にも優れていること。実際、Cd値は0.23というセグメントトップクラスの低さを誇る。
■ 総括:BYDの“海”は、SUVにも押し寄せる
初回となる今回は、BYDシーライオンの開発背景とそのポジショニングについて整理した。単なる電動SUVではなく、グローバル市場をにらんだBYDの本気が詰まった1台だということがお分かりいただけただろう。
次回は、「技術編」として、シーライオンに搭載されたeプラットフォーム3.0、インバーターや電池技術、スマートコックピットなどのハードウェア/ソフトウェア両面の進化を詳しく追っていく。
連載目次
第1回:BYDシーライオン誕生
〜SUV市場を揺るがす“電動の海獣”〜
EVとSUVの交差点で生まれた新シリーズ「海洋ファミリー」。シーライオンが誕生した背景と、そこに込められたBYDの狙いとは?
第2回:テクノロジーで泳ぎ切れ
〜eプラットフォーム3.0とブレードバッテリーの真価〜
専用EVアーキテクチャと最新の電池技術がもたらす、快適性・安全性・パフォーマンスの全貌を解説。
第3回:世界を泳ぐ
〜欧州・アジア・北米への布石と市場戦略〜
シーライオンが挑むのはテスラでもトヨタでもない。“グローバルSUV市場”という大海だった。その戦略と地域別展開を追う。
第4回:海の向こうの“声”を聴け
〜オーナーとメディアが語る実力〜
実際に乗った人はどう感じたのか? 中国・欧州を中心に寄せられたユーザーレビューと試乗記から、評価のリアルを読み解く。
第5回:シーライオンの波紋
〜BYDの次なる野望とEV市場の行方〜
このSUVが業界にもたらすインパクトとは? ポスト・テスラ時代の鍵を握るのは、中国発のこの“海獣”かもしれない。













