太田哲也が「KEEP ON RACINGな仲間たち」にインタビュー:自動車雑誌編集長がレースに挑み続ける理由
2025.02.14
KEEP ON RACINGな仲間たちに『Tipo』編集長登場
「クルマを運転するって楽しいよね」——そんなシンプルな問いかけから、『Tipo』佐藤編集長と太田哲也の対談は始まった。
クルマ業界に身を置く者にとって、「楽しさ」は切っても切れない要素だ。しかし、佐藤編集長は業務ではないレースでも勝ち負けにこだわる。仕事と同等以上にレースを人生の中心に置いているのだ。
佐藤編集長とは彼が新入社員だった当時からの付き合いで、僕の『Tipo』長期連載エッセイ「KEEP ON RACING」の担当でもある。そこで佐藤編集長にも、KEEP ON RACINGな仲間たちとしてご登場いただくことにした。
佐藤編集長が本業の雑誌編集に関わりつつも、長年モータースポーツに携わり、レースを続ける理由を太田哲也が聞いた。
言われたこと以上をやる。「勝負」へのこだわり
太田哲也(以下、太田)「レースはサトウにとって仕事じゃないなら、本来はそこまで追い込む必要もないもわけじゃない。でももはや仕事と同等以上にレースを頑張り続けてきたよね。よく筑波サーキットの練習走行で会うし。その原動力はなんだろう?」
佐藤編集長(以下、佐藤)「普通にやる仕事なら、言われたことをやればいい。でも、それ以上のものを生み出すには、自分が興味を持たないと踏み出せないからです」
佐藤編集長は、編集者としてもレーサーとしても、求められる以上のことを常に追求してきた。それが雑誌作りにおいても、レースにおいても、自分自身を突き動かす原動力になっているという。
佐藤「レースはすごくわかりやすい世界。タイムが出るし、勝負の結果は一目瞭然。勝ち負けにこだわるからこそ、やる意味がある」
勝つためには努力するしかない。その姿勢は、編集の仕事にも通じる。単なる情報提供ではなく、「どうすれば読者がもっと楽しめるか」を考えることが、雑誌作りの本質だと佐藤編集長は語る。だからやっぱり勝ち負けにこだわってる。
佐藤「負ければめちゃくちゃ悔しいし、僕は参加すればいいっていうタイプでもないないんですよ。もちろんレースの雰囲気とかも好きですよ、あの、なんだろう、緊張感とかそういうのも好きですけど、でも出ることに意義があるんじゃなくて、順位がつけられるんだったら頑張って1位のほうがいいわけじゃないですか。で、1位取るにはどうしたらいいかって、やっぱりそこは努力するしかない」
“メディアの人間”としてのプライド
佐藤「昔、うちの会社が主宰したサーキット走行会で、太田さんや斎藤真輔さんは別として、編集者やモータージャーナリストが全然速く走れないのを見てがっかりしたことがあった。クルマの本質をフィードバックをする立場の人間が、それでいいの?、と」
メディアの世界ではクルマの知識が豊富なジャーナリストが多い。しかし実際に運転して速く走れる人は少ない。その現実に違和感を覚えた佐藤編集長は、自らの運転技術を磨き、結果を残すことで“説得力”を持とうと考えた。
佐藤「僕は、最初は完全に素人でした。でも、レースで結果を出せば、周囲の見る目が変わる。やるからには勝ちたいし、勝つためには徹底的にやる」
レースの世界は実力主義。遅ければ相手にされないし、速ければ誰もが認める。編集者として、ジャーナリストとして、レースに挑むことは、彼にとって自分の武器を作ることでもあった。
プロではないが、プロと同じ熱量で
佐藤「あのメディアでそういうことやってる。まあ、当時はいろいろ呼んでいただけるところもあったんで、なんだろうな、お客様的な部分で呼ばれる時もあったんですよ。取材してよ、みたいな。そうするともう最初から期待されてないわけですよね。
でも自分が結果出すと全く雰囲気が変わったんですよ。みんな周りの扱いが変わってきて、やっぱりそこは弱肉強食じゃないけど、速い人が一番偉い世界でわかりやすいし、そうすると自分の意見が通るようになってくるじゃないですか。
もうちょっとこうした方がいいんじゃないですかっていうのも言えるようになるし、やっぱり「メディアだから」みたいな部分でなめられるのも嫌だってところもあって。そこをやるんだったらちゃんと走って。
プロのレーサーは、成績がそのまま収入につながる。僕は会社員だから、やめようと思えばいつでもやめられる。それでも続けるのは、面白いから」
レースは、単なる趣味ではない。研究し、試行錯誤し、どうすれば速くなるかを突き詰める。その過程が楽しいからこそ、佐藤編集長はレースを続けている。
太田「現役のときは、例えばトレーニングでも辛いなと思うけど、ここでやめたらみんなと同じ。その先に行くために、もう一歩も二歩も自分を追い込む。それができる人が生き残れる世界。才能だけじゃ通用しない。でもそれはプロレーサーと言う職業だから当たり前と考えていた。だから仕事じゃないなら、そこまで追い込む必要もないと思っていたけど、そうでもないかも。趣味だから楽しければいいと考えて、速さを追求しなくなると、楽しさも減ってしまう気もするね」
佐藤編集長は仕事ではないレースにも勝ち負けにこだわる。その姿勢は、レースだけでなく仕事にも影響する。編集者として企画を考えるとき、単に記事を書くのではなく、「どんな組み合わせが面白いか」「どうすれば読者が熱狂するか」を追求する。レースも、編集も、勝つためにやることは変わらない。
50代を迎えても挑戦を続ける
佐藤「50歳くらいまでレースを続けられたらいいなと思っていました。でも、52歳になった今も、まだ走れていることに感謝しています」
太田「50歳なんてまだまだいけるよ、いける。学ぶべきことがたくさんあるたくさんあるから、成長の幅もある。年齢とともに衰えを感じるし、タイムも落ちるけど、しかし、それを運命だとは受け入れず、若い頃の自分に挑戦し続ける気持ちだよ。去年よりも今年のほうが何かをつかんで速く走れるかもしれない、そう思って研究する。
永遠に若くはいられないけど、チャレンジを続けることで、若さを維持し、時折は取り戻すことで不老長寿が得られるかも(笑)」
これからのモータースポーツのためにレースを続けることが、新たな出会いやチャンスを生み出す。
佐藤編集長は昨年、S耐24時間レースでMAZDAのチームに招かれた。それも、長年積み重ねてきた挑戦の結果だ。
佐藤「『Tipo』もさらに尖らせていこうと思っているし、もっとイベントもやりたい。動画や英語コンテンツにも力を入れていくべきだろうし、モータースポーツを盛り上げる仕掛けも考えたい」
挑戦し続けることが、新しい未来を作る。レースも、仕事も、全力で取り組むからこそ楽しい。その精神がある限り、佐藤編集長の挑戦は続いていく。
佐藤「勝ったら楽しい。でも、そのためには努力が必要。面倒くさい部分もあるけど、そこを乗り越えた先に、最高の瞬間が待っている」
KEEP ON RACING──挑戦を続ける者たちの魂は、決して止まることはない。
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