クールスーツが無かった頃のレースはこんな感じ
2024.08.09
現役時代の後半期には、クールスーツを使用していた。車内に搭載したアイスボックス内の冷たい水が、ベスト内のパイプを通して身体の表面を循環してくれる。それ以前のクールスーツが無かった頃は、各ドライバーが独自のアイデアでいろいろ工夫していた。
まず僕の失敗談として、叩くと冷たくなる瞬間冷却パックがある。宮城県の菅生サーキット(スポーツランド菅生)で開催されたグラチャンの本番の時、このアイテムをレーシングスーツの胸の部分に入れておいたのだ。スタート前に叩いて冷却が始まってしまうとレース後半まで保たないので、ぎりぎりまで我慢して、暑くなって苦しくなった時に叩こうと考えていた。
そしてレース後半、暑くなってきたので胸をバン!と叩いた。「……?」冷え始めない。叩き方が弱かったのだ。フォーミュラカーはギアがクロースしており、2速、3速でグングン加速して4速にシフトアップ、みたいなことをやっているときにはシフト操作が忙し過ぎて、瞬間冷却パックを叩いている暇がない。チャンスはストレート部分だが、競争相手とバトルをしている最中だと、そんなことをしているどころじゃない。
富士スピードウェイのように直線が長ければよかったかもしれないが、菅生はストレートが短く、またコクピットは狭いうえにがっちりと6点式ハーネスをつけているから腕の可動域が制限され、パックを叩く力も入れにくいのだ。ストレートで5速に入れ「よし、ここで叩こう!」と思ったものの、あっという間にブレーキングポイントが来てしまい、結局、その繰り返しで最後まで衝撃を与えることができず、レース中に胸で瞬間冷却パックを温めただけ……という悲しい結末だった。
このときの反省から、次に保冷剤を使ってみた。しかしレーシングスーツの中に入れておいてもさほど冷えない。保冷剤は体に密着させる必要があるのだ。
さらに次の作戦として、「いよいよスタート!」というタイミングでメカニックに頼み、レーシングスーツの中に直接氷を入れてもらうことにした。ところが走っているうちに氷があちらこちらに移動してしまい、冷やす必要性の薄い腹や下半身ばかりが冷却されて、首や胸が冷えなかった。
結局、軍手に氷を入れて、それをハーネスを装着した後でレーシングスーツの中に入れてもらうのがいちばんよかった。問題は軍手を見られると格好悪いことかな。
現役の時に運転していたレーシングカーと比べて今のクルマは身体への負担は1/5くらいかな。それでもクルマから降りると、心臓がバクバクして死にそうになる。現役を退いてから27年、歳もくったしトレーニングもさほどしていないし身体の40%が汗をかけないので、昔と比べても仕方ないが、周りの選手を見渡すと意外と平気な顔をしている。「みんなタフだな。若いな」と思う。
現在の日常は屋内で原稿を書いたり、スタッフと会議や打ち合わせをすることが多い僕の仕事の内容では体が弱くなって当たり前だ。現役の時はサウナスーツを着て炎天下をランニングしたり、エアロバイクを高速で漕いだりしていた。今そんなことをしたら死んでしまうだろうけど、やっぱり心肺機能向上のためエアロバイクは再開しようと思う。
おそらく3~5年後には、気温が40℃を超える日が普通に来ると思う。そのときにも平気でいられるように、サーキット走行とトレーニングを続けていこう。
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