NDロードスター。ライトウェイトスポーツカーとしてのND魂よ永遠に!
2023.01.30
4代目のロードスターとして2015年に「ND」型がデビューしたときに、チーフデザイナーを務めた中山 雅さんによる“NDに対する思い入れやデザインの方向性”に関するプレゼンテーションを拝聴したことがある。作り手のアツい想いが強く伝わってきて、深く共感したことをいまでも憶えている。
中山さんはそのときに、“こういうクルマを造ろうと思った”というスケッチをフリーハンドで描いて説明してくれた。
デビューから7年という歳月が流れたが、そうだ!中山さんに、愛車にあのスケッチとサインをしてもらおう!と思いついた。
さっそく連絡したら快諾してくれて、でも「広島まで太田さんの車を持って来るのは大変なので、東京に行くときに時間を合わせてサインしましょう」、ということとなった。
そしてついにその日が来た。我がNDロードスターはいつも茨城県筑波サーキットそばのガレージに置いてあるので、事前に取りに行っておいて、指定された日、都内高田馬場にあるマツダ・ディーラーに出向いた。
デカく描いてもらいたかったのだが、ボディだと雨風で消えてしまうだろうから、内装でいちばん面積の取れるダッシュボードに!
ちなみにスケッチはプロポーションから描くのではなく、タイヤの位置はココで、エンジンやミッションはココで、となるとシフト位置がここだから人はココに座らせて……、とレイアウトをデザインする方法と同じ手法で描いていく。中山さんが下書きなしで丸いタイヤを正確に一発で描く様子に、さすがプロだな~。
僕が感動して「これは家宝ですよ!」と伝えたら、中山さん曰く「太田さん、7年前にも同じセリフ言ってましたよ」と。そのとき紙に書いたスケッチをもらったのだそうだ。なんと己の記憶力の弱いことか。大変失礼しました。たぶん、ちゃんと額に入れて家宝として家に取っているはずだが、それ自体を忘れてしまったようです。
マツダ広報マンが「メッセージはいいですか?」
「ああ、もちろんお願いします」
ということで書いてくれたメッセージは「ND魂」
「いいですね~。どういう意味ですか?」とうかがったら、
「太田さんにND魂を託すということです」というありがたいお言葉を頂いた。
ホント!?うれしい。光栄です!
ND魂とは何かを自分なりに考えてみた。
NDロードスターは凄いクルマだ。先代NCよりも排気量を少なくして1.5リッターにするというのは、普通に考えれば人気が出ない方向に進むリスクもあるわけで、作り手としては勇気がいったはずだ。
しかし、NDロードスターはライトウェイトスポーツカーとしての本分を追求し、他のスポーツカーが出力向上&重いクルマになっていく流れに逆行した。実際に排気量が1.5リッターであっても、運転してみれば、それによって得られた軽さのメリットが享受できる。そして何よりもスタイルがカッコイイ。
かつてFD型のRX-7も似た価値だった。軽量化に取り組み、かつ独特のカッコよさがあった。
マツダは時おり時代の流れとは異なる方向でクルマ好きを感動させてきた。NDロードスターも同様の感動を生むクルマだといえる。
そう考えると“ND魂”は、世の中の常識に囚われないで“コレがいい”というクルマを作り出していくマツダのチャレンジスピリットと解釈してもいいだろう。
よいクルマを作ってもクルマが売れないと次がない。スポーツカーの宿命だが、ロードスターの継続がかかっていることを考えながら、開発を進めたNDの作り手の勇気に共感する。
そしてNDロードスターは、7年が過ぎた現在でも、販売台数を伸ばしている。多くのユーザーが“ND魂”に共感している証左と言えよう。
“ND魂” 永遠に。