フォルクスワーゲン up! GTI サーキットインプレッション by 太田所長(所員:高桑秀典)
2019.08.28
既報のとおり、フォルクスワーゲンが40年以上にわたって造り続けてきたスポーティグレードの『GTI』は、現在、ゴルフ GTI、ポロ GTI、up! GTIの3モデルで構成されています。当カーライフラボの記事において、すでに「ポロ GTI サーキットインプレッション」を掲載しているので、今回は「up! GTI サーキットインプレッション」をお伝えします。
「最高出力116ps、最大トルク200Nmを発生する、軽快かつパワフルな3気筒1.0リッター・TSIエンジンを搭載しているup! GTIは、6速マニュアルトランスミッションや17インチ専用ホイールなどを採用しています。MTなので、乗っていて楽しいです。クルマ造りや安全に対するフォルクスワーゲンの妥協なきポリシーは、ラインナップの上から下まで浸透しており、どのモデルに乗っても“いいクルマ”だと感じることができます。高い剛性を誇る軽量ボディは、一般道ではもちろん、サーキットでもその真価を発揮します。ステアリングホイールを切ったぶんだけ曲がり、アクセルを踏んだぶんだけ加速してくれます。取り回しのいいボディサイズは、ダイナミックなハンドリング性能と気持ちのいいスピード感をもたらしてくれます。
そして、専用スポーツサスペンションからもクルマがしっかりしている印象を受けますが、でも足が硬いわけではなく、乗り心地がいい点がポイントです。クルマのキャラに合わせてスピンを防ぐように安定方向にセッティングされていて、その分、急にクルマの向きを変えることができません。電子制御を介入させて横滑りしないようになっているのはメーカーとしての狙いです。ということで、up! GTIではステアリングホイールを切り込みながらアクセルを踏んでも加速しません。大きな走行ラインをとり、コーナーの出口でステアリングホイールを戻しながらアクセルを踏んでいくようにすると速く走れます。先日の袖ヶ浦フォレストレースウェイは酷暑でしたが、タイヤを含めて、まったくのノーマルで、それでも1分28秒の好タイムをマークできました。エンジンの排気量がわずか1.0リッターのクルマとは思えませんでした。
ブレーキパッドだけは変えて走りました。なぜならフォルクスワーゲンは走行中に電子制御が介入してくることによってブレーキの温度が上がりやすいので、ノーマルパッドでサーキット走行をすると数周でフェードしてしまうことがあります。そのため、安全上、耐熱温度を上げたブレーキパッドが必要になるわけです。しかし、闇雲にブレーキパッドの摩擦力を上げてもガッと効いてブレーキローターを攻撃するだけで、なおかつABSが早く利いて、かえって制動距離が長くなったりします。今回は、そういったことにならないように、コントロールしやすくてペダルのタッチがよく、ABSが利いて、よく止まるような試作ブレーキをテストして、バランスどりしました。
すでにゴルフRでのテストでフォルクスワーゲン用ブレーキパッドの“理想形”が見つかっているので、ポロ GTIやup! GTIも、同じコンセプトでテストしつつ、さまざまな摩材を試しています。同じ日にポロ GTIでも袖ヶ浦フォレストレースウェイを走りましたが、こちらはドライビングレッスンと呼ばれるTEZZO製のブレーキパッドで走行しました。あくまでも一般ラジアルタイヤを履いて、公道もサーキットでの走行会もOKというブレーキパッドです。
ブレーキパッドの耐熱温度が上がっているので、リスクが減っており、連続走行をしてもフェードしたり、制動力が落ちたりしないことを確認できました。このようにTEZZOではただ単に摩材を当てはめるのではなく、クルマ毎に個別にテストして最適な摩材を探究しています。それがTEZZOの特徴です。