原点回帰のオートサロンでカスタムの魅力を再確認

2024.02.11

●ショップや個人が主役に
東京オートサロン2024が1月12日~14日までの会期で開催された。会場はこれまでと同じように幕張メッセだ。

オートサロンは、1983年に東京エキサイティングカーショーとしてスタートした。当初は、チューニングやドレスアップ祭典で、ショップの出展がメインだったが、’90年代後半から自動車メーカーも大々的にブースを展開し、ニューモデルの発表などもオートサロンで行われるようにもなってきた。それに伴い、ショップによる「良い意味でバタ臭い」イベントから、メーカーによる「洗練」の方向性が色濃くなってきていた。

東京モーターショーは、昨年の2023年10月28日~11月5日に名称を「ジャパン モビリティショー」に変えた。そしてクルマそのものだけでなく、クルマの周辺環境の充実を意識したテーマ性を持つようになったように見えた。それでオートサロンもそうした方向に進むのかなと思っていたが、趣を異にしていて個人的にはうれしいことに原点回帰というか、またショップや個人が主役の方向に戻ってきているように感じられた。手作り感あるカスタムが多くみられ、会場内の熱気もスゴイことになっていた。

クルマの家電化と言われ始めて久しく、最近ではEV偏重主義ともいうような風潮の中にありながら、今回のオートサロンでは、クルマ好きな人々がまだまだ元気いっぱいであることを実感できた。会場内のあちらこちらで、作り手が楽しんでいる感じが見て取れる出展車が多く見受けられ、それを見ていると「オレもカスタムしよう!」と思うのだった。

●目についた個別カスタムカーたち
気になるクルマがいろいろあったが、見ていて感じたのは、カスタムショップやチューナーが自社製品のパーツやコンプリートカーを売ろうとして造ったクルマもあるにはあるが、それよりも「オレの渾身の一台を見てくれ」的な商売を度外視した独創的な出展車が増えてきたことだ。趣味の延長上で時間をかけ、採算や作業時間を度外視してカスタムした作品が目についた今年のオートサロンだった。

今回のオートサロンでも、大手自動車メーカー、名の知れたカスタムショップやチューナー、そして、自動車学校といった出展者がワクワクドキドキできるクルマを披露したが、僕が注目したクルマや方向性について紹介しよう。

●やはり注目したのはスポーツカーである。やはり、スポーツカーをベースとしたカスタムは面白い。
出展車両で多かったのはトヨタGR86だが、その中でも東京国際カスタムカーコンテスト2024のドレスアップ・スポーツカー部門で最優秀賞を受賞した風間オートサービスのGR86 カーボンスペック/ドリフトは、ボディ全体がカーボンで作り変えられていて力の入った作品だった。
こういうのが出てしまうと、もう他のGR86がベースの展示車への驚きが薄れてしまう。一台一台のクルマをよく見れば面白いが、今後たくさんのGR86展示車両の中で目立つためには独自の発想が必要となるだろう。

個人的に注目した展示車の中の一つは、リフトアップされていたZEAL ポルシェ ボクスター 986だ。これはポルシェがパリダカに出場したイメージで、ボクスターをパリダカ仕様風に仕上げられていた。SUVがベースだと普通だが、ボクスターをベースとしてやる発想が面白い。

ル・マン24時間レース優勝マシンであるマツダ 787Bのチャージカラーを纏ったSPHERE LIGHTオロチも、我々には思いつかない自由な発想だった。しかしこれがマツダ車なら納得だが、光岡がなぜ?と多少の違和感はあった。

ここ最近、フェラーリの価格が高騰したことによりオリジナルを大切にする人が増え、フェラーリをイジる人が少なくなった。しかしLIBERTY WALKはル・マン仕様にカスタムしたF40を展示していた。
多くの人が高騰を期待して、できるだけオリジナルをキープし、乗らず、イジらず、価値を下げないようにと考える一方で、F40であっても「宝物箱」にしまっておくのではなく、オリジナルを重視せずカスタムをして大胆にカラーリングを変えてしまったりするのは頼もしい。

カスタムではないが、マセラティのMC12も展示されていて、こういう珍しいスーパーカーを見られるのもオートサロンの醍醐味だ。

スポーツカーやスーパーカーにばかり注目していたわけでない。アウトドア志向のクルマ好きが増えたことにより、車高を上げてマッドタイヤを履かせるカスタムが定番となったことも確認した。

さまざまなクルマをチェックしたが、DAMD Inc.のブースにジムニーシエラをベースとして懐かしいヨーロピアンスポーツ・ランチャデルタの最終モデルのカラーリングが再現されていた。懐かしいなあと思う反面、それってありなのかな? と疑問も持った。俺って古い価値観なのだろうか。

●旧車カスタムの流れ
そして、旧車カスタムも目立っていた。と言ってもクラシックカーをオリジナルに忠実に再現するのではなく、現代的な解釈やテクノロジーを「注入」したクルマが多くなってきていた。この手法は共感できる。現代のクルマに乗っている我々から見て、性能的には昔のクルマがいいわけはない。そこで外板をカーボンで作りえたり、エンジンを新しくしたりしている。盲目的に旧車を崇め奉っているのではない点が気持ちいい。

クラシックカー用の純正パーツはどんどん無くなっていくので、旧車のテイストを上手く残しつつ、新しいパーツで組むのはいいことだと思う。昨年のオートサロンに展示されていたハコスカーボンのように、クラシカルな外装をフルカーボンで造ってしまってもいいだろう。

また、初代ロードスターで人気だったVスペシャルの内外装をオマージュしたCABANA Racing ND Roadsterが展示されていたが、当然のことながら走りの質は現行モデルのほうがいいし、往年のロードスターはタマ数が少ないので、これもアリだと思う。

TOYO TIRESのブースに展示されていたマツダ サバンナ RX-3のワゴンをドリフトマシンに仕立てた車両は、よくクルマが残っていたな! という観点で感心してしまった。これをガンガン走らせるのだから頼もしい。クルマを買って、もったいないので乗らない、ということのほうがモッタイナイので、愛車を使い倒す感覚が自分にも必要だな、と改めて思った。

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