道具感強め、商用車的シンプルなフィアット・ドブロがカッコいい
2023.09.01
趣味に本気で入れ込む大人の遊び心を刺激してくれるクルマとして登場したフィアット・ドブロは、オシャレでシックな洗練されたギアであるプジョー・リフター、ファミリーや仲間とアウトドアで楽しく遊べるクルマとしてリリースされたシトロエン・ベルランゴに続く、ステランティスが日本国内で展開する3モデル目のミニバンだ。今回試乗したのは5人乗りのドブロの方だが、7人乗りのドブロ・マキシも設定されている。
内外装にブラックの樹脂パーツが多用されているドブロは、いかにも乗用車っぽいリフターやベルランゴよりも商用車っぽさ、実用車っぽさが強く、それがユーザーの目に魅力的に映るかどうかが注目すべきポイントになると思う。ステランティスは、ルノー・カングーのように、商用車っぽいクルマを乗用車として使う層のマーケットが日本に一定数あることをわかっていて、日本導入を決めたのであろう。
いま、樹脂バンパーを持つ貨客兼用車のような雰囲気のクルマが一部のカーマニアの間では人気だ。オシャレな乗り物として認知されているが、貨物運搬仕様が存在するルノー・カングーも初代が日本に入ってきた当初は道具感が強い小型MPVだった。日本では乗用車仕様のカングーが大ヒットし、ルノージャパンの屋台骨を支えているが、トヨタ・ハイエースよりもエクステリアデザインがオシャレな多目的車として評価されたということだろう。
ドブロは、バンパーやサイドガードなどに樹脂パーツが用いられているが、それが見事にイタリアンデザインになっている。インテリアも樹脂パーツだらけで、いかにも実用車といった雰囲気だ。エアコンファンの風量やオーディオのボリュームを調整するためのスイッチがモニター内にあるのでなく、従来からの物理スイッチになっており、これも実用車として使い勝手のよさを追求した結果なのだと思う。昨今のイタフラ車はスイッチをモニター内に設定したり、物理スイッチを小さくする傾向にあるが、ドブロはそうではない点は扱いやすさの面から歓迎すべき点だ。
もし、このようなドブロを買ってみた自分をイメージしてみる。ヘルメットやレーシングスーツや携行缶などを積んでサーキットに行ってみたら、使い勝手も雰囲気もぴったりだと感じた。また家族やペットを乗せて小旅行を楽しんだりする際にもドンピシャのクルマであろう。ドブロも貨客兼用車のような雰囲気があるので、荷物を載せるときに気を遣わなくてすむし、いかにもレジャーを楽しんでいるという気持ちにさせられる点も楽しい。
パワートレインとして、排気量1.5リッターのBlue HDi ディーゼルターボエンジンを採用している点も実用車っぽい。飛ばして走るようなクルマではないので、ガーガー言うディーゼルエンジンの排気音(意外と癒される音質)を聞きながら、ゆっくり走るのも楽しい。背が高いミニバンながらもディーゼルターボにより力強い走りを実現している。ただしその全高のおかげで立体駐車場には入れない。
乗り心地は商用車的なゴツゴツを予想したが、まったくそうではなく柔らかく路面をいなしてくれる。旧来からのフィアットの乗り味をしっかり受け継いでいると言えよう。タイヤが大径ではないことも、路面から受ける衝撃が吸収し、乗り心地の柔らかさに貢献しているはずだ。乗り心地がいいので動的性能はSUVの範疇に入れても良いが、インテリアの質感は商用車的で、でもだからこそかえってオシャレに感じたりもする。ここ最近、インテリアが高級志向のジープにばかり乗っていたので、余計そんな気持ちになったのかもしれない。
もしドブロを買うのであれば、契約書に押印する前に自身のライフスタイルの中で「ドブロで何をするか?」を考えておいたほうがいいかもしれない。商用車っぽさが強いが故、ドブロをセカンドカーやサードカーとして活用するのがイメージ的には最良だろう。もしファーストカーだとしたら、カスタムなどして演出を加えたい気がする。内外装がシンプルなドブロはカスタムの題材としてピッタリだろう。
ドブロに乗ってみて思ったのは、内装に革が張ってあったりする豪華な仕上げって本当に必要なの?ということだ。クルマを移動のための道具として考えれば、そういう仕上げは必要ないわけで、ドブロは、あくまでも道具です!というスタンスがかえってカッコイイのではないか。
〇スペック
FIAT Doblo
●全長×全幅×全高:4,405mm×1,850mm×1,850mm
●ホイールベース:2,785mm
●車両重量:1,560kg
●エンジン:ターボチャージャー付直列4気筒DOHC(ディーゼル)
●排気量:1,498cc
●最高出力:96kW/3,750rpm
●最大トルク:300N・m/ 1,750rpm
●トランスミッション:8速オートマチック
●使用燃料:軽油
●タンク容量:50L
●サスペンション:前/マクファーソンストラット 後/トーションビーム
●ブレーキ:前/ベンチレーテッドディスク 後/ディスク
●タイヤサイズ:前後/205/60 R16
〇プライス
FIAT Doblo ¥3,990,000
FIAT Doblo Maxi ¥4,290,000
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