COTYで僕が日産サクラ/三菱eKクロスEVに本賞10点を投じなかった理由

2023.01.06

第43回 2022–2023 日本カー・オブ・ザ・イヤーは日産 サクラ/三菱 eKクロス EVが受賞した。軽自動車が選ばれたのは初めてのことだ。同時にK CAR オブ・ザ・イヤーも受賞した。

選考委員が投じた合計得点は399点で、授賞理由は「日本独自の軽自動車規格を採用し、現実的な車両価格でバッテリーEVを所有するハードルを下げ、日本でのバッテリーEV普及の可能性を高めた。また本格的な脱炭素時代を前に、減少するガソリンスタンドや公共交通などの衰退も予想される状況で、軽自動車+バッテリーEVという組み合わせは、高齢者を含めた多くの人の移動の自由を担保するだけでなく、社会的課題解決への可能性を示している。さらに、走行性能についてもハンドリングと動力性能が従来の軽自動車を凌駕しているという声が多く集まった。安全装備も360°セーフティアシスト(全方位運転支援システム)を搭載し、高級車並みの運転支援機能を装備している点も評価された」というものだ。

選考委員には計25点が与えられ、必ず一台のクルマに満点となる10点を入れなくてはならない。僕が満点を入れたのはトヨタ クラウンで、サクラには満点を与えなかった。その理由を説明しよう。

日産 サクラ/三菱 eKクロス EVは、軽自動車でありながらEVで、日産と三菱が凄く力を入れて造ったクルマだ。EVとしての効率もよく考えられていて、車体の剛性が高く、運動性能もいい。そうした軽自動車とは思えないほど高いクオリティは、僕自身、高く評価すべきと考えている。内装の品質の高さも特筆ものだ。

ただし、「軽自動車」枠という点が引っかかるのだ。

軽自動車は税制が優遇される。それは手頃な価格のクルマを多くの人に普及させよう、という基本理念が根底にあるからだ。その点、スズキ アルトは、クルマを多くの人に普及させるという軽自動車の基本理念にぴったりで、車両本体価格があくまでも安く、燃費がよく、いかにも軽自動車らしい軽自動車だといっていい。しかし日産 サクラ/三菱 eKクロスは、軽自動車の基本理念には合っていない。

さらにEVだと補助金があるので、価格は高いが、ユーザーは安く買える。メーカー希望小売価格はサクラが254万8700円~304万400円、eK クロス EVは239万8000円~293万2600円だ。東京や横浜市は補助金が高いので、さらにお得。税優遇や補助金をうまく(ちゃっかり?)活用しているのだ。

その「ちゃっかり」が気になってしまった。軽自動車の枠内を使うのはアイデアだが、それを他メーカーもみんなが活用し始めたら、軽自動車の優遇制度自体が揺らぐことになりかねないのでは。

というのが僕の考えだ。