2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー10ベスト選出

2022.12.04

自動車評論家や有識者からなる60名のカー・オブ・ザ・イヤー選考委員によって、2022-2023日本カー・オブ・ザ・イヤーを決定する第一次選考会で、全48台のノミネート車の中から最終選考会に進む「10ベストカー」が選出された。この中から日本カー・オブ・ザ・イヤーが選出される。

僕が選んだ10台の中で、特に印象に残ったクルマについて述べよう。

まずはスズキ アルト。僕の中にあるかつての「アルト47万円」のイメージを踏襲するコストパフォーマンスの高さがウリだ。優遇税制を受ける軽自動車の本来あるべき姿だということもあり、自分的には好感を持つ。往時のアルトはグレードによってはエアコンが無かったりしたが、現行モデルは全グレードエアコン付き、安全装備も備えるし、パワーウィンドーも完備だ。

ちなみに、僕が所有するスズキ・エブリ(エブリ君という愛称で呼んでいる)はいまだに窓はクルクル回す手動である。クルクルは、コレはこれで味があり、軽自動車だと助手席にも手が届くのでそんなに不便も感じない。「その分アルトも安くしたら」と開発者に言ってみたら、「検討します」と言っていたが、本当かな~。

実際に乗ってみて、豪華な感じはもちろんしないが、この「素」の味が、素材の良さを活かした焼き魚定食みたいな感じで、クルマってこれでも十分楽しいなと思わせてくれる。こういうモデルを作り続けるスズキには共感をおぼえる。

トヨタ クラウンは、16代目となり、びっくりするぐらいカタチが変わった。15代目までは、ずっとセダンで“それなりに「クラウン」”だったが、今回突然、姿かたちをセダンからクロスオーバー(リフトアップ)に変えて背が高くなった。

この変化はオーナーは受け入れられるれるのか!?と疑問を持って試乗してみた。
ところが、最近の欧州車などでトレンドとなりつつある内装の物理的なスイッチを廃してモニターの階層の中に入れてデザインをすっきりさせる手法は採用せず、物理的なスイッチをレイアウトする従来の手法で、これなら今までのクラウンユーザーも違和感なく乗ることができるはずだ。

また、新しい機構もその存在を出しゃばらせることなく、控えめな効果でバランス良くまとめられていることも、トヨタの開発ドライバーの意見を尊重するやり方に変えた良い点が表れていると感じた。これだったら見た目こそ変わったが、乗り味もクラウンで、ずっと七三分けだった髪型がアフロヘアーになっただけで、心は以前と同じ。それは評価できる。

日産 フェアレディZの車台は前モデルがベースだが、姿かたちはガラッと雰囲気を変えてきて、なぜかレトロチックに感じるところが、僕らの世代は興味を惹かれる部分だ。どこか往年のS30型Zが思い出されるのは、基本的に水平方向のラインの傾きを似せているからだそうだ。ターゲットユーザーも、新規ユーザーではなく、昔のZに乗っていた人やZに憧れを持っていた人に絞る。当然だが、初期段階で注文が殺到しているそうで、それも納得だ。

試乗した印象として、フォルムはレトロ的であるが、走りは現代のサーキット志向。ドライ路面でのタイヤの強烈なグリップ力によるコーナリング性能や、エンジンの低中回転域にトルクを持っていくことで強烈な加速力を生み出している。

その一方で、ウエット路面ではナーバスな挙動で、スポーツドライビング時には冷や汗をかかずにいられない。スポーツカーとレーシングカーは似て非なるものと考えている僕としては、もっと足を柔らかくするなどして、オールマイティに対応できる安楽なスポーツカーにしてほしかった。エンジンの特性も加速最優先ではなく、低回転から高回転まで伸びあがっていく気持ち良いフィーリングの方が個人的には好みではある。つまりレース志向が強すぎる印象なのだ。

ルノー アルカナは、セダンよりも車高が高いがSUVよりも低いという、最近の欧州車のトレンドとなりつつあるクロスオーバー・クーペの代表的な姿をしている。SUVが多くなってきた日本の道路で、それよりちょっと低いクーペが交ざっていると目立つ点がオモシロイ。

新機構的には新開発のミッションが注目で、機械好きには刺さることだろう。乗り心地は背が高いSUVほど揺れないし、ガタガタもしないので良いと感じた。

さて、11月24日に選考委員が袖ヶ浦フォレストレースウェイで11台に乗り、そこで横比較して採点、今年の10ベストカーが選ばれたわけだが、同点のクルマがあったので11台になった。今年は12月8日に日本カー・オブ・ザ・イヤーが決定する。

 

【スペック&価格】

スズキ アルト A

●全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1525mm
●ホイールベース:2460mm
●車両重量:680kg
●総排気量:658cc
●エンジン形式:水冷4サイクル直列3気筒
●最高出力:34kW/6500rpm
●最大トルク:55N・m/4000rpm
●トランスミッション:CVT
●サスペンション:マクファーソンストラット/トーションビーム
●ブレーキ:ディスク/リーディングトレーリング
●タイヤサイズ:155/65R14 75S
●使用燃料(ガソリン):無鉛レギュラー
●燃料タンク容量:27L

スズキ アルト A(2WD・CVT) ¥943,800
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トヨタ クラウン CROSSOVER RS

●全長×全幅×全高:4930mm×1840mm×1540mm
●ホイールベース:2850mm
●車両重量:1900kg
●総排気量:2393cc
●エンジン形式:直列4気筒
●最高出力:200kW/6000rpm
●最大トルク:460N・m/2000~3000rpm
●トランスミッション:Direct Shift-6AT
●フロントサスペンション:マクファーソンストラット
●リアサスペンション:マルチリンク
●ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
●フロントモーター:1ZM/61kW/交流同期電動機
●リアモーター:1YM/59kW/交流同期電動機
●使用燃料(ガソリン):無鉛プレミアム
●燃料タンク容量:55L

トヨタ クラウン CROSSOVER RS  ¥6,050,000
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フェアレディZ

●全長×全幅×全高:4380mm×1845mm×1315mm
●ホイールベース:2550mm
●トレッド[前/後]:1555~1565mm/1565~1595mm
●車両重量:1570~1620kg
●エンジン形式:DOHC・筒内直接燃料噴射V型6気筒
●エンジン排気量:2997cc
●最高出力:298kW(405ps)/6400rpm
●最大トルク:475N・m(48.4kgf・m)/1600~5600rpm
●燃料供給装置:ニッサンDi
●使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:62L
●変速機:6速マニュアル/マニュアルモード付フルレンジ電子制御9速オートマチック
●駆動方式:RWD

フェアレディZ     ¥5,241,500
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ルノー アルカナ R.S.ライン E-TECH フルハイブリッド

●全長×全幅×全高:4570mm×1820mm×1580mm
●ホイールベース:2720mm
●トレッド[前/後]:1550mm/1560mm
●車両重量:1470kg
●エンジン形式:自然吸気 直列4気筒 DOHC16バルブ
●エンジン排気量:1597cc
●最高出力:69kW(94ps)/5600rpm
●最大トルク:148N・m(15.1kgf・m)/3600rpm
●メインモーター(E-モーター)型式:5DH
●タイプ:交流同期電動機
●最高出力:36kW(49ps)/1677-6000rpm(ECE)
●最大トルク:205N・m(20.9kgm)/200-1677rpm(ECE)
●サブモーター(HSG)型式:3DA
●タイプ:交流同期電動機
●最高出力:15kW(20ps)/2865-10000rpm(ECE)
●最大トルク:50N・m(5.1kgm)/200-2865rpm(ECE)
●燃料供給装置:電子制御式マルチポイントインジェクション
●使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
●燃料タンク容量:50L
●変速機:電子制御ドッグクラッチ マルチモードAT
●駆動方式:前輪駆動     

ルノー アルカナ R.S.ライン E-TECH フルハイブリッド     ¥4,290,000