HONDA e と、ホンダF1撤退に思うこと

2020.10.21

ホンダが2021年シーズンでF1から撤退することになった。

アメリカ・カリフォルニア州が2035年までにガソリン車の販売を禁止すると発表するなど、いま、自動車メーカーにとってEV(電気自動車)の開発および市場投入は待ったなしの大きな課題となっている。

とは言え、これまでのガソリン車やハイブリッド車も続けなくてはならないので、既存の自動車メーカーは大変だ。そういう意味ではEVに注力できるテスラのような新興メーカーの方が有利な状況かもしれない。

ホンダがF1撤退を発表したが、そんなに驚きも失望も感じていない。なぜならホンダもトヨタも会社の調子が良いときにはF1に参戦し、悪くなるとF1撤退を繰り返してきたからだ。日本の自動車メーカーにとって、F1は夢とかスピリットではなく広告宣伝のひとつだから、業績が落ちてきて未来への投資が必要となれば、撤退は経営陣にとって当然の選択なのだ。

ただそう考えると、F1の創成期からずっと参戦し続けるフェラーリはスゴイと思う。途切れることなく参戦し続けているので、F1のオーガナイザーからも優遇されているが、それも納得できる。

フェラーリは市販車を売った利益でF1への参戦資金を得る。フェラーリ社にとって、フェラーリ車のオーナーはサポーターなのだとフェラーリ社はオーナーに伝えている。オーナーはクルマを買うことでフェラーリをスポンサードしている気持ちとなる。他の自動車メーカーと成り立ちが違うし、スピリットも違う。ブランド力の違いも当然だ。

さて、ホンダが「Honda e」と呼ばれる新しい電気自動車を、F1撤退のタイミングでリリースしてきたのは偶然だろうが、このクルマにF1で培った「ホンダスピリット」がどのぐらい吹き込まれているかを、こじつけであっても見出したい。

僕が興味を持ったのは、バッテリーの冷却について対策を講じていること。そして後輪駆動であることもだ。まがりなりにもF1をはじめとするモータースポーツに力を入れてきたホンダらしい。

というのも昨年、僕は日産リーフ・チャレンジ(ワンメイク・スプリントレース)にエントリーした。そこで分かったのは、レースにおけるEVの限界だった。

EVが航続距離が短いことは知られているが、もっとも困るのはレース中にバッテリーの温度が上がってしまうことだ。筑波サーキットをわずか数周走っただけでバッテリーの温度が56度程度まで上昇し、すると安全性の面からセーフモードに入って、パワーが激変する。タイムも一周当たり10秒くらい遅くもなる。

原因のひとつとして、日産リーフはバッテリーが密封されていて、冷却を考えていない。ところがHonda eはバッテリーを冷却するためのクーラーが付いている。それが「いかにもホンダらしいな」と思う。期待が膨らむ。

もちろんHonda eはシティコミューターであり、スポーツカーではない。でも、先日、ジャーナリスト試乗会で運転してみたら、思いのほか走りがよかった。

EVなので一瞬の出だしのパワーがあるし、バッテリーがフロアに敷き詰められているため低重心で、安定している。足まわりもしっかりしていた。
そして何よりも後輪駆動、それがよかった。

 

後輪駆動は、フロントが操舵、リアが駆動を担当する。前輪が駆動から解放されたことで、ハンドルがよく切れて小回りが可能だ。それがメーカーとして採用した一番の理由だ。でも僕としては、運転していて楽しいことがあげられる。
Honda eはスポーツカー的な走りを狙っているクルマではないが、そんなにスピードを出さなくても、たとえば近所の交差点を曲がっただけでも楽しさが味わえる。

なぜ楽しいのだろう。なぜ自分のフィーリングに合うのだろう。
考えてみると、動物は後輪駆動みたいなものだし、自分も4つ足で走れと言われたら、間違いなく後ろ足で大地を蹴って走るだろう。後輪駆動は自然の摂理なのだ。

カタログには後輪駆動の楽しさは書いていないけれど、スペックでは語れないドライビングプレジャーがあるのだ。

ホンダには「TYPE R」というスポーツモデルの伝家の宝刀がある。どうせならHonda e TYPE Rをリリースしてくれ。かつてホンダがF1に参戦していたことを忘れないでいられると思うからだ。